そんな事を話していると、

「報告! 上空より鎧を付けた翼竜2匹接近! スネークス閣下かと思われます!」

駆け込んできた兵士が、キュベス大佐に報告した。

「なに? まだ1日もたっとらんのだぞ? 何か忘れ物か? それとも何か緊急事態でも起きて引き返してこられたのか?」

キュベス大佐が、報告した兵士に聞き返すが、

「まだ到着されてませんので、分かりかねます。大佐にとりあえず報告をと思い、走ってきましたので!」

「わかった、そちらに向かう」

そう言って席を立ち、キュベス大佐が砦の中央広場に向かうと、今まさに降下してきたプーとペー。

プーの背にはパトリックが乗っているが、ペーの足には何も掴まれていなかった。

それを見たキュベス大佐は、

「スネークス中将閣下、こんなに早くご帰還とは、何か問題発生ですか? それとも忘れ物でも?」

と、パトリックに尋ねる。

「いや、終わった!」

と、簡潔に答えたパトリック。

「は?」

と聞き返すキュベス大佐。

「プラム王国の件は一件落着だ」

「えっと、この短時間で?」

「ああ!」

「単純な私の興味本位なのですが、よろしければどのように落着したのか、お聞きしてもよろしいですか?」

「プラム王国国王、ライオネルだっけ? 殺して来た! それで王の弟のアントニーを国王にする事にして、俺に絶対の服従を誓わせた!」

「え?」

「ん?」

「あのライオネル王を倒したのですか? あの強靭な王を?」

「ああ! あ、俺がじゃないぞ? ペーにプチッと潰させた!」

「プチッとって、虫じゃあるまいし……」

「汚ねえトマトを潰したような感じだったぞ」

「うっ、想像できてしまった……」

と、口元を押さえるキュベス大佐。

「なんか顔色が悪いが大丈夫か?」

「ちょっと吐き気が……」

「そりゃ良くないな、やはり寝不足はダメだぞ? 尋問の時に他の兵から、キュベスは寝てないはずって聞いてたが、ちゃんと寝ろよ? お前には暫定少将として、南方面軍を指揮して貰う事になるだろうからな!」

「いや、寝不足は関係ないのですがって、え? 少将? いやいや、任命は元帥陛下でなければ出来ないのですが?」

と、キュベス大佐が言うと、

「だって元帥陛下は崩御されて、正式な元帥不在だし、王太子殿下が即位されたら、正式に辞令出して貰う事になるだろうけど、今は緊急事態だ。南方面軍で大佐はキュベス大佐だけだろう? なら決定だろ!」

「ええ? そんな無茶な話ありますか?」

「無茶でもやるしかないんだよ! マクレーンの謀反を早急に解決しなければならないし、とりあえずディクソン領に滞在されてる、ウィリアム王太子殿下の救援に向かって貰う。プラム王国はこちらに攻めて来ないから、砦には治安維持などの、最低限の兵士だけ残して、ディクソン領に向かう準備を! 元々行く手筈だったし、すぐ出来るだろ?」

「たしかにそうですが、閣下はどうされるので?」

「俺は、ひとまずディクソン領に飛んで情報を仕入れてくる」

そう言って、再びプーの背に乗り飛び去ったパトリックを見つめて、キュベス大佐が、

「暫定少将とか、聞いた事ないが良いのだろうか……」

と呟き、横にいた兵士が、

「しかし、行かないわけにはいかんでしょ。王太子殿下の窮地です。スネークス閣下が王太子派なので、どう考えてもウィリアム王太子殿下の勝ちでしょう。協力しておかないと、南方面軍の立場がありません」

と、言った。

「確かにな。よし、急いで準備させろ!」

「はっ!」

南の砦が慌ただしく動き出す。