「今日、朝倉は風邪で欠席だ」

朝のホームルームで担任が言ったその連絡にクラス中の男子生徒が一斉に『えぇえええっ!』っと、心底残念そうな声を上げた。

(朝倉さん、風邪引いたのか……)

やはり、朝倉さんは学校一の美少女なだけあって休むと分かりやすいくらいにクラスの男子はガッカリしているな。

「朝倉さん風邪だって」

「そうなのー!?」

「マジやばくない?」

「かわいそうー」

「心配なフレンズなんだね」

女子は男子ほど大きなリアクションはしないけど、女子も朝倉さんを心配して女の子同士で話していた。朝倉さんは男子だけじゃなくて女子からも人気者だからな。もしこれが俺ならきっと誰も俺の事を気には止めないのだろう。

(何か……今日は静かだな)

いつもと変わらない無言の時間。なのに、隣に朝倉さんがいないというだけで……何故、俺は『少し寂しい』っと感じてしまうのだろう。

ぼっちは一人という状況に強いはずだ。なのに、それを『寂しい』と感じてしまうほどに俺は朝倉さんが話しかけてくるこの時間を気に入っていたのかもしれない。

「っと、言うわけですまないが誰か帰りに朝倉の家へこのプリントを届けてくれないか?」

「おい、お前行けよ」ヒソヒソ

「アホ、俺朝倉さんの家の場所知らねぇよ」ヒソヒソ

「そういえば朝倉さんの家って何処? ミカは知ってる?」ヒソヒソ

「あ、アタシ? アタシは……ほら、部活があるから」ヒソヒソ

「私も委員会があるから……ゴメン、パスね」ヒソヒソ

「おーい、誰かいないかー?」

だから、だろうか。

「あ、えーと……先生、俺が届けます」

今日も彼女に会いたいと思った俺は手を上げていた。