【校舎裏の駐車場】

安藤くん、演説スペース

「ねぇ、委員長……」

「何かしら?」

「山田の奴……ちゃんと宣伝してるの?」

【観客の生徒 0人】 シーン

「してないんじゃない?」

「これだったら、この場所で山田に歌でも歌わせた方がまだ効果ありそうだよな……」

「一理あるわね……」

(しかし、いくら俺が人気が無いと言っても、まさか一人も生徒が来ないとは……流石の俺でもヘコむな。まぁ、来た所で今回の演説は寝耳に水だったからロクなことは言えないだろうし、誰も来なくて逆に助かった感はあるんだけど……)

「あのぉ~? ここって、選挙の演説会場であってますかぁ~?」

(――っと、思ったら、誰か来た!?)

「え、あ……その――えぇ、私が安藤です」

「ちょ、安藤くん!? 貴方、そんなキャラじゃないでしょ!」

「え、なにそれ? ウケる~」 クスクス

(やべぇええ! 挨拶、テンパって失敗したぁああああああああああ!)

(安藤くん!? 貴方、さっきまで人が来ないって嘆いていたでしょ! なのに、何で誰かが来た瞬間にしどろもどろになっているのよ!?) ←アイコンタクトで会話してます

(だって、マジで誰かが来るとは思ってなかったんだもん! それに、来たと言っても一人だよ? この場合って、急に演説とかするべきなの? てか、演説の内容なんて考えてねえよ! 委員長、助けて!) ←アイコンタクトで会話してます

(はぁ、仕方ないわね。ここは安藤くんが落ち着きを取り戻すまで、委員長の私が引き受けてあげるから、貴方はとりあえず演説の内容を考えておきなさい)

(御意!)

「こんにちは、私は彼の推薦人を勤めてるの。貴方は見ない顔だけど……一年生かしら?」

「あ、はぁーい♪ 先輩の言うとおり一年でーす! 今日はぁ~、討論会での先輩が面白かったんでこっちに来ちゃいましたぁー♪」

(やっぱり、後輩の子だったのね。でも、なんか軽い子というか……見るからにイマドキの子って感じよね。髪の色も栗色に染めているし、制服も着崩して軽くメイクまでしているわ。髪型は普通のショートカットに見えて細かい所までセットしてあるし、これはクラスでは結構上位のカーストにいる可愛いギャルタイプって感じだわ。でも、そんな子が安藤くんに興味を持ってここに来るかしら……?)

(うーん、委員長がメロンだとすると、この子はレモンだな。まぁ『C』って感じだろう。

ふぅ……委員長が時間を稼いでくれたおかげで何とか平静を取り戻したぜ!)

「えーと、来てくれてありがとう。実は見てのとおり、俺の演説会場誰も来なくて『演説』すらしてなかったんだ」

「えーマジですか? アハハハ! まさか、本当に誰もいないなんて、ウケるんですけど~♪ でも、観客が誰もいないとか寂しくないですかぁー?」

「まぁ、そうだね」

「ですよねぇ……あ! じゃあ、せっかくだから私が観客になるんで、先輩ちょっとその壇上に立って演説してください! 私、先輩がどんな演説するのか興味あるんですよ~♪ ほら! せっかくなんでスマホで先輩の演説シーン録画しますから!」

「うーん、そうだな……」

「はあ? 録画って……」

(何、この子? スマホで録画って少しマナーがなってないんじゃ無いのかしら?

安藤くん、この子の言う事なんて断りなさい! 多分だけど、この子はただの冷やかしよ。きっと、安藤くんの演説会場が誰もいないって噂を聞いてからかいに来た類ね。その証拠にさっき『本当に誰もいないなんて』とか言っていたから、誰かからこの場に誰も観客がいない事を聞いて知ったに違いないわ。たった一人の観客の前で選挙の演説をしてる姿なんて正直あまり良い気持ちにはならないでしょう。でも、断ったら選挙のイメージが悪くなるかしら……?

なら、ここは私が無理矢理にでも中止に――)

「うん、いいよ」

「わぁー、本当ですかぁ!」

「ちょ、安藤くん!?」

(貴方は何を言っているのよ! 貴方でも、この子はただの冷やかしだって分かるでしょう! そんなのに一々付き合わなくてもいいじゃない!)

(焦るなって、委員長。俺にだってこの子がただの冷やかしなのは分かっている……でも、せっかくこんな場所まで来てくれたんだ。それに俺も暇だったし、少しくらいは付き合ってあげてもいいじゃないか……まぁ、演説なんてする気はサラサラ無いけどな)

「でも、実は俺……まだ演説で何を言うか決めてないんだ。だからさ、一緒に俺の選挙演説の内容を考えてくれない?」

「「はぁ……?」」

【次回予告】

「皆、いつも応援してくれてありがとう! 委員長よ。

さーて、次回の『何故かの』は?」

まさかの協力して選挙演説を考えることになった安藤くんと後輩ちゃん!

果たして「ぼっち」と「ギャル」の相性は如何に!?

次回、何故かの 「『顔』」 皆もペタモン、ゲットだぜ!

「数少ない支持者なのに、何やっているのよ……」

* 次回予告の内容は嘘予告になる可能性もあります。