「それでね! その時の安藤くんの超次元的宇宙をも凌駕する独創的なセンスと言ったら――」

「ウン……スゴイネ」

(長い……話が長いよ! 朝倉さん……もう、安藤くんの話『転生伝冥皇編に入ったあたりから何も話が頭に入ってこないよぉ……だ、誰か助け――)

「あれ? 朝倉さん、こんな所にいたんだ!」

「ふぇ! あ、安藤くん!? 何で図書室に?」

「うん、俺は毎度のごとくやる事が無いから、時間を潰しに来ただけなんだけどね。朝倉さん、それよりさっき生徒会長が朝倉さんを探しているみたいだったけどいいの?」

「え? 嘘! もうこんな時間だわ。流石に姉ヶ崎先輩の用事も終っているわよね。安藤くん、ありがとう。私、姉ヶ崎先輩を探してくるわ!」

「うん、行ってらっしゃい。朝倉さん」

「あ! 安藤くん、この用事が終ったら一緒に帰りましょう!」

「分かった! じゃあ、ここで待ってるね」

ガラガラ

「そういえば……朝倉さん、生徒会長が何処にいるか聞かなかったけど場所分かるのかな?」

(まあ、朝倉さんなら大丈夫だろ!)

「てか、朝倉さんと藤林さんが一緒なんて珍しい組み合わせ――」

「あ~んどうくぅーん! たすかったよぉおおおおおおお!」

「うわぁ! ふ、藤林さん!? いきなり机に覆いかぶさってどうしたの!? もしかして、朝倉さんに何かされた?」

(朝倉さんの事だから『そのおっぱい半分でいいから私に寄越しなさい!』とか言って揉まれたとか――)

「ううん……ちょっと、朝倉さんの話が長かっただけ……ご、ゴメンね? あはは、緊張してからそれが解けて、一気に疲れが……」

「あぁ……」

(なるほど、朝倉さんってスイッチが入ると話しが長くなる癖があるからな。それに朝倉さんと藤林さんってタイプがまったく逆だし、さしづめ図書室に偶然二人っきりになって気まずかったんだろう……)

「なんか、ウチの朝倉さんが暴走したみたいでゴメンね?」

「ううん! ぜ、全然大丈夫だよ? フフ……でも、安藤くんの『ウチの朝倉さん』ってその言葉良いね。そう言えば、さっきの話で朝倉さんが『もう、式場の場所まで考えてあるんだから!』って言ってたけど……二人は近いうちに結婚でもするの?」

「ああ、それは朝倉さんの『発作』だから気にしなくて良いよ」

「そ、そうなんだ……」

(安藤くんも苦労してるのかな?)

「てか、藤林さんと朝倉さんで何の話してたの?」

「え、えーと……その好きな人について……とか?」

(へぇー、なんだ意外と普通に女子みたいな会話してたんだな)

「ああ、そうか。藤林さんって、確か石田が好きなんだよね」

「はいぃいいい!? なな、何で、安藤くんまで知っているの!?」

「え、いや……前に朝倉さんがそう言ってたから……」

「あぁ……」

(そういえば、朝倉さんは気づいてたんだもんね)

「因みに、藤林さんって石田の何処が好きなの?」

「――って、またその話題繰り返すのぉお!?」

(このカップルは一体何なの! も、もう……こうなったら同じ質問を返してやるんだから!)

「あ、ゴメン……こういうのって聞かれたくなかったかな?」

「う、ううん! でも……私だけ言うのも不公平だし……安藤くんも『朝倉さんの何処を好きか』教えてくれないと不公平じゃない……かな?」

(ふふん、どうだ安藤くん! こういう話題って聞かれると恥かしくて答えれないでしょう? だから、その気持ちを身を持って知るべき――)

「あ、そうだよね! ゴメン、俺デリカシー無くてさ。それで『朝倉さんの好きな所』だよね? うーんとね……」

(――って、嬉々として答えるんかぁーーーーーーーーい! え、安藤くんってそう言うの答えるタイプ!? 『ぼっち』なんだから私と同じで恥かしがるタイプじゃないの! あ、そうか二人揃って『バカップル』なタイプか♪

うわぁ~、話長くなりそうな予感……)

「うん、好きな所は全部だけど、しいて一つ挙げるなら『真っ直ぐな所』だね」

「あれ? 意外と短いね……てか『真っ直ぐな所』って?」

「ほら、朝倉さんって良くも悪くもなんと言うか、猪突猛進な感じでしょ?」

「あぁ~うん、そうだね……」

「俺は、朝倉さんのそんな考え無しな真っ直ぐさが羨ましいんだよ。やっぱり、俺は『ぼっち』だから、何処か臆病で他人を朝倉さんみたいに真っ直ぐ見れないで、いつも自分の殻にこもろうとするから……でも、朝倉さんはそんな俺の殻を真っ直ぐ進んで突き破ってくれた。時々思うんだよね。もし、朝倉さんがいなかったら、俺は今でもクラスの中に入れないで誰とも関わらずに『ぼっち』を極めていたんじゃないかな? て……だから、俺はそんな俺の殻を無理矢理壊してくれた朝倉さんの真っ直ぐさが『好き』でそれに『憧れている』んだ」

「……そうか」

(なるほど、最初に安藤くんがこんな質問に答えるのを意外だと思ったけど、それは安藤くんが朝倉さんに出会って変わった影響なんだね)

「それで、藤林さんは石田の何処が好きなの?」

「ええ! それって、やっぱり……私も答えなきゃダメ?」

「もちろん! だって、俺に喋らせたわけだからね~?」

「うぅ……」

(でも、こういうこずるい一面は安藤くんだよね……)

「私は……最初、一年の時にクラスで軽いイジメにあってたのがきっかけかな?」

「え?」

「あ! イジメって言ってもそんなたいしたものじゃないよ? ただ、私だけ存在を忘れられてプリントが回って来なかったり……お昼のたびに許可無く勝手に机を使われたり……体育とかでペアを組んでくれる人が見つからなかったりとか? そんなイジメというほどのことじゃない軽いことなんだけどね? あはは……」

「嘘だろ……それって」

「ほ、ホントにそんな大事じゃないんだよ! 今ではそんな事も無くなったし、当時もちゃんと言えばプリントもくれたし席も返してくれたし……だから、本当にそこまで酷いイジメじゃないんだよ。だから、そんな心配しないでね?」

(いや……そうじゃなくて、藤林さんがさっき言った現象、一年の時の俺にも同じ事が起こってたんだけど……え、俺もイジメられてたってこと!?)

「それでも、当時の私にとってはそれが凄く嫌でね……でも、中々口に出せなくて、心の中で『何で私がこんな目に会うの……?』っていつも泣いてたんだ……」

「…………」

(俺の場合、普通に『おいおい……皆、俺の存在見えて無さすぎじゃね? まぁ、でもこれはこれで騒がしいリア充に話しかけられることも無くラノベに集中できるから良いな』って、思ってたな……)

「それで、石田がイジメを止めるようにクラスに言ってくれた訳だ」

(なるほど、分かります。良くある少女漫画展開ね……虐められている女の子をクラスのイケメンが庇って恋に落ちるという――)

「ううん……『君はバカか?』って、怒られちゃった」

「は?」

【次回予告】

「皆、いつも応援してくれてありがとう! 委員長よ。

さーて、次回の『何故かの』は?」

「何故かの」過去回! 石田くん編!?

次回、何故かの 「石田事変」 よろしくお願いします!

「だから、君はバカなんだ」

* 次回予告の内容は嘘予告になる可能性もあります。