あれはソレが来て少しの頃……ソレを腹にくっつけて、ぶらぶらとみんなの訓練を眺めていた時の事だ。

「なートシ」

「んー?」

「クーりんは何しておるのじゃ?」

「剣の練習だろ?」

「そうではなくての、なんで剣の練習しておるのじゃ?」

「そりゃ強くなる為だろ?」

「あー!ちがうのじゃ!ちがうのじゃ!」

「どうしたんだよ?」

「連れて行くのじゃ!クーりんのもとに!」

ソレをクリスの元まで運搬する。このおこちゃまは何を騒いでいるのだろう?

「おい!6分割!」

「ソレ?どうしたの?」

「なんで剣の練習なんじゃ?」

「剣が好きだから?」

「お主は精霊魔法の方が得意じゃろ?」

「「え?」」

クリスが精霊魔術だと?肉体強化以外に魔力を使っている覚えはない。

「剣術はスキルいくつじゃ?」

「8」

「う、高いの……精霊魔法はいくつじゃ?」

「……6」

「クリス6なのか?使ってるとこ見た事ないや」

「見た事ないって、使った事がない」

「へ?それで6?」

「トッシーの女になってから増えた、誰かのが増えたのかと思っていたが、気づいたらここまで上がっていた」

「使えばもっと強くなれるじゃろうに」

「私は剣一筋、今更」

「今更と言って強くなれる可能性を捨てるのか?全ての可能性を試すのが嫁の務めではなかったのか?お主は剣の才能も努力の才能もあったのじゃろう、更に先に進みたいのであれば……あとは自分で答えを出すのじゃ」

「……少し考えさせてくれ」

……

「ソレ凄いなー、見ただけでわかるのか?」

「凄いのじゃ!視れば大体わかるのじゃ!」

「他にも才能に気づいてない人いるか?」

「レーランとテコテコは間違っておるぞ、逆じゃ逆」

「ん?レラムとテコが逆?テコが神聖魔法か?」

「ちが!連れて行くがよい!」

「レラムーテコー!」

「トッシー様とソレ、どうかしたのかしら?」

「呼んだー?」

「ほれ、爆弾は薙刀をデコに渡すのじゃ、デコはトンファーを爆弾にわたすのじゃ!」

「言う通りにしてみてくれ」

「練習用の木トンファーだけどいいの?」

「なんかあるみたいだから頼む」

「交換しましたわ、なにすればいいのかしら?棒術スキルはないですわよ」

「僕もないよー」

「いいのじゃ!お互いの動きは何度も見ておるじゃろ!やってみるのじゃ!」

「無茶振りだよな、メグリじゃあるまいし」

最初は渋々やり始めた2人だがすぐに変化がおきる。

「あれ?なんだろ?」

「テコも?何かしらこの感じ?」

「ほれ次じゃ、そのまま2人で打ち合ってみよ!」

おっかなびっくり初めての対人戦……

「あの2人どうしたの?武器交換して遊んでるの?」

「リリィか見ててみ、あれで武器交換して5分たってなんだぜ」

「え?」

「既にぎこちなさが消え、笑みまで浮かべて打ち合ってるな」

「あれ?レラム姉様トンファー使えたんですね」

「テコが薙刀使ってる?初めて見るはずなんだけど」

レビィにトラコも見に来た、と言うかどんどん人が集まってくる、二人は30分ほど汗を流し……

「トッシー様!お願いがあります!」

「トシ君お願い!」

「了解、帰って風呂入ってからな、どうだった?」

「薙刀を使っていた時には気がつきませんでしたがトンファーを使って理解しました」

「僕もだよ!なんて言うのかな?トンファーは好きなんだけど足りないピースがあるような、トンファーだけ使ってた時には気にもならなかったんだ!でも今はそのピースがはまった感じ!伝わってるかな?」

「2人とも大満足って感じなのは伝わるよ、ソレにお礼しなきゃな」

「ソレ!凄いよ!今度クッキーの日は僕の半分あげるね!」

「いいのか!クッキーじゃぞ!」

「うん!」

「わたくしはお礼どうしましょう、クッキーはテコに言われてしまったわね」

「爆弾もクッキーだともっと嬉しいのじゃ!」

「それでしたらクッキー半分差し上げますわ!」

ちなみに半分なのは、せっかくのおやつなんだから半分は自分で食えよー、と前に何となく言ったのを覚えているようだ。

「聞いたかトシ!次のクッキーの日は2倍なのじゃ!あ!でもトシから人の取っちゃダメって言われたのじゃった……」

「ソレ、いい事したお礼の品はいいぞ」

「え?」

「ソレが誰かの役にたったんだ、お礼が欲しくてやるのは褒められる事じゃない、けど心からのお礼は受け取らないといけないんだ」

「貰ってもいいのか?」

「おう、他にも気がついたら教えてあげてな、ただ一回で全部食べるなよー」

「わかってるのじゃ!次はけいさんして食べるのじゃ!」

この後も、ソレの気まぐれアドバイスで嫁達が更に強くなっていった。ソレは俺と二人だとみんなを可愛らしく呼ぶのに、そっちはまだ先かな?