With my brother and sister. VRMMO games.

「……なるほど」

奏良は一拍置いて動揺を抑えると、有が口にした言葉を改めて、脳内で咀嚼した。

「ギルドの兼任は、運営の許可がいる。有のお母さんは、そのやり取りをしていたんだな」

「ああ。ギルドの兼任を承諾していると分かれば、愛梨も困らないだろうからな」

奏良の言及に、有は落ち着いた口調で答える。

「でも、お兄ちゃん。運営から申請許可が下りているのなら、『アルティメット・ハーヴェスト』の人達も、愛梨ちゃんのギルド兼任のことを知っているんじゃないのかな？」

「その通りだ、妹よ。だからこそ、『アルティメット・ハーヴェスト』のギルドに赴く必要がある。運営側が愛梨のギルド兼任を認めたことで、望と愛梨の入れ替わりに関しての追及がしやすくなったのだからな」

花音が声高に疑問を口にすると、有は意味ありげに表情を緩ませた。

「愛梨のギルド兼任の要請とともに、俺と愛梨の入れ替わりに関してのことを聞くんだな」

「まあ、そちらが本命だろうな」

紘達のギルドに赴く真意に触れて、望と奏良は納得したように頷いてみせる。

「鶫原徹が監視していたことから考えて、椎音紘が真相を語らない可能性はあるが、それでも赴く価値はあるだろう」

「すごーい！　さすが、ギルドマスターのお兄ちゃんだね！」

有の思慮深さに、花音は両手を広げて歓喜の声を上げた。

「それに王都『アルティス』は、大勢のプレイヤーやNPC達が行き来する場所だ。新たなギルドメンバーは、そこで探した方がいいだろう」

「王都『アルティス』は、初めてログインしたプレイヤーが訪れる場所だからね。ギルドに所属していないプレイヤーもいるかもしれない」

有の言葉を受けて、有の母親はインターフェースを使って、王都、『アルティス』の情報を検索する。

その瞬間、望達の目の前には、王都『アルティス』のホログラフィーが表示された。

王都『アルティス』ーー。

そこは、『創世のアクリア』における五大都市の一つだ。

高位ギルド、『アルティメット・ハーヴェスト』のギルドホームがあり、クエストを受注できる『冒険者ギルド』もある。

ギルドに所属していないソロプレイヤーは、王都『アルティス』などの五大都市にある冒険者ギルドから依頼を受ける必要があった。

多くのソロプレイヤーは利便性を考えて、五大都市の宿屋を拠点としている。

それゆえ、ギルドの勧誘は、五大都市で行われることが多い。

王都、『アルティス』は初めてログインした際に配置される場所だ。

『創世のアクリア』の公式リニューアル後、新たに、このゲームを始めたプレイヤーを勧誘することができるかもしれない。

「愛梨の件、それにギルドの新たなメンバー探し、やることがたくさんあるな」

「望くん、一緒に頑張ろうね」

望が咄嗟にそう言ってため息を吐くと、花音は元気づけるように望を見上げる。

そこで、有の母親は少し困ったように切り出した。

「有、花音、望くん、奏良くん。そろそろ時間も遅いし、王都『アルティス』に赴くのは次の機会にした方がいいね」

「そうだな」

「急ぐ案件ではないから、別の日に改めるのが妥当だな」

有の母親がインターフェースで表示した時刻に、望と奏良は視線を向ける。

新たな目的を前にして、望達は決意を新たにするのだった。