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Episode 100: The Tower of Dusk and the Lonely Brave ⑥ ☆
「よし、望、奏良、プラネット、妹よ、行くぞ! 第ニ層へ!」
「ああ」
「うん!」
一時の休憩を挟んだ後ーー。
有の決意表明に、望と花音が嬉しそうに言う。
望達は最上階を目指して、階段を上がっていく。
『朽ち果てた黄昏の塔、パラディアム』を徘徊するモンスター達は、同じ上級者クエストである『カリリア遺跡』で遭遇したモンスター達の強さを上回っていた。
キマイラ達が魔力を放出すると、望達に向かってマグマのような灼熱の珠が襲いかかる。
「くっ……!」
混沌とした炎舞を、望達はかろうじて避けた。
「わっ! 炎の珠の嵐で、先に進めないよ!」
即座に鞭による攻撃で怯ませようとしていた花音は、目の前に迫った炎の珠のラッシュに反撃の手を止める。
「切りがないな」
奏良は威嚇するように、キマイラ達に向けて、連続で発泡する。
風の弾がキマイラ達の顔面に衝突し、大きくよろめかせた。
『元素還元!』
有は、奏良へと注意を向けたキマイラ達の隙をついて、炎の珠に向かって杖を振り下ろした。
有の杖が炎の珠に触れた途端、とてつもない衝撃が周囲を襲った。
炎の珠達が、まるで蛍火のようなほの明るい光を撒き散らし、崩れ落ちるように消滅したのだ。
「炎の珠の寄せ集めでは、トラップアイテムを一つ作るくらいが関の山だな」
有は一仕事終えたように、眩しく輝く杖の先端の宝玉を見る。
『元素復元、覇炎トラップ!』
今度は襲いかかってきたキマイラ達に向かって、有は再び、杖を振り下ろした。
有の杖が床に触れた途端、空中に炎のトラップシンボルが現れる。
キマイラ達がそれに触れた瞬間、熱き熱波が覆い、瞬く間に灰にしてしまう。
「奏良よ、頼む」
「言われるまでもない」
有の指示に、奏良は弾丸を素早くリロードし、銃を構えた。
発砲音と弾着の爆発音が派手に響き、キマイラ達は次々と倒れていく。
「はあっ!」
望は剣を掲げると、連なる虹色の流星群を一閃とともに放つ。
望の特殊スキルと愛梨の特殊スキル。
それが融合したように、キマイラ達に巨大な光芒が襲いかかる。
一片の容赦もない蒼の剣の一振りを受けて、その場にいた全てのキマイラ達が消滅していった。
「このフロアは、もうモンスターはいないみたいだな」
「わーい! 望くん、大勝利!」
剣を下ろした望が一呼吸置くと、駆け寄ってきた花音は歓喜の声を上げた。
「望くんの特殊スキル、すごいね!」
「ありがとうな」
花音が声高に思いのままを述べると、望は照れくさそうに答える。
『朽ち果てた黄昏の塔、パラディアム』は、期間限定の上級者クエストだ。
たとえ、上位ギルドだとしても、塔の最上階を目指すことはかなり困難だったはずである。
しかし、望と愛梨の特殊スキルの力が込められた蒼の剣は、望達に圧倒的な力と優位性を見せつけた。
蒼の剣を一振りすれば、第一層で苦戦を強いられたケルベロスやキマイラ達を難なく、倒すことができる。
現れるモンスター達を容赦なく駆逐していく姿は、まさに圧巻の一言に尽きた。
高難易度のクエストを攻略するためには、望の特殊スキルは必要不可欠だろう。
「よし、このまま、最上階に行くぞ!」
「ああ」
「うん」
有の指示に、望は肩をすくめて、鞭を地面に叩いた花音は喜色満面に張り切る。
望と花音を先頭に、用心深く第ニ層を歩いていった。