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Episode 133 (d) Breath of Hikaru ④

「しかし、残りは、護衛クエストのダンジョン。探索クエストのダンジョン。アイテム生成クエストのダンジョンか。どれも時間がかかりそうだな」

「有様。護衛クエストは、NPCのキャラの護衛なのでしょうか?」

有の言葉に反応して、プラネットがとらえどころのない空気を固形化させる疑問を口にした。

「プラネットよ、恐らく、そうだろう。ダンジョンに行けば、NPCのキャラに会えるはずだ。さすがに、NPCのキャラを放置して戻るというのは後味が悪い。護衛クエストだけは、達成させる必要がありそうだな」

任務の困難さを想起させるようなクエストに、有は切羽詰まったような声で告げる。

「恐らく、一番、時間がかかりそうなのは護衛クエストだろう。このダンジョンは、最後に向かった方が良さそうだな」

「ああ。それに、調査に残ってもらったイリスに確認したところ、『サンクチュアリの天空牢』には『カーラ』が施された仕掛けだけが残っていた」

有の言に答えた徹の胸には、様々な情念が去来した。

「今回のダンジョン調査クエストを受けて、『カーラ』は動いている。だが、『アルティメット・ハーヴェスト』は、『レギオン』の不穏な動きに対して厳戒体勢に入っているから、これ以上の助勢は厳しいな」

「つまり、今後も派遣されるのは、君達だけなんだな。どこまで『カーラ』と渡り合えるのか、判断がつかんな」

徹の説明に、奏良は紅茶を口に含むと、疲れたように大きく息を吐いた。

『レギオン』の戦力の大半が投入されれば、『アルティメット・ハーヴェスト』は対応に困難を極めるだろう。

規格外である紘の特殊スキルによって、情勢を自由に選択することができるとはいえ、美羅から神のごとき力ーー明晰夢を授かった『レギオン』と『カーラ』は、想定外の出来事をもたらしてくるかもしれない。

「とにかく、紘の指示どおりに動くしかないな」

徹は気持ちを切り替えるように一呼吸置くと、改めて這い寄る水晶帝のクエスト情報を眺める。

有は前に進み出ると、不穏な空気を吹き飛ばすように口火を切った。

「とにかく、望、奏良、徹、勇太、リノア、そして妹よ。明後日、『這い寄る水晶帝』のダンジョンに行くぞ!」

クエスト情報を改めて見て、有はすぐにその決断を下した。

「有。君は人使いが荒い上に、全く効率的ではない。そもそも、ダンジョンの攻略順が決まっていない。それに『レギオン』と『カーラ』が美羅とーーリノアとシンクロできる望と愛梨を、狙ってこないとも限らない」

有の提案に、奏良は懐疑的である。

だが、それでもこの状況を打破するためには、それしかないと奏良は悟った。

既に、世界規模で、『レギオン』と『カーラ』の企みが社会の中枢にまで食い込んできていたからだ。

激化していく現実世界と仮想世界。

理想の世界という悪疫が、二つの世界を変えた。

苦しみ、悲しみ、不安。

そんな感情に押し潰されそうな日々。

この先、世界はどうなってしまうのだろう。

様々な思いが交錯する中、二つの世界全体を揺るがす戦いへ向け、望達は前に進むための歩みを止めない。

先の見えない暗い世界の裏側に、望達は触れ、窺知しようとしていた。