Yuusha Dakedo, Maou Kara Sekai Wo Hanbun Moratte Uragiru Koto ni Shita

Valentine's Day Special Edition Valentine's Day But the Brave Fight

――さぁ、来たぞ。

バレンタインだ!

「勇者! バレンタインだ、チョコをくれてやるぞ! さぁ、遠慮なく食べるがいい!」

深夜0時。日付を跨ぐと同時のこと。

魔王の部屋で、俺はチョコレートをもらった。

「……あ、ありがとう」

嬉しい。彼女の気持ちは素直に嬉しい。

でも、でも……今年のバレンタインは、異常に多かった(泣)

「フハハハハハ! 勇者のために、我は一生懸命作ったのだ……愛情のままに作っていたらたくさん作っちゃったけど、勇者なら食べきれるであろう?」

部屋の中央には、山積みにされたチョコレート。

丁寧に一つずつ包装されたチョコレートは、もちろん全て魔王が作ったものなのだろう。

「料理は苦手だがな、ユメノに教えてもらいながら頑張った!」

無邪気に笑う魔王は、外見年齢と同じくらいに子供っぽい。

幼い純真な笑顔に、俺は笑顔を返す他なかった。

「も、ももももちろん!」

目はきっと泳いでいるだろう。

だって、魔王が作ってくれたチョコレートは、一人では到底食べきれない量なのだから。

でも、愛しのお嫁さんが、苦手ながらに一生懸命作ってくれたのである。

食べない、という選択肢は俺にはなかった。

(俺は勇者……かつて、人間の世界を救った英雄! チョコレート程度、食べきれなくてどうする!?)

これは『戦い』だ。

出会ったころから続いている、魔王と勇者の戦いだ。

最初は戦場で拳を交わし、最近はベッドで愛を交わしているが。

ともあれ、俺は勇者……魔王に負けるわけにはいかない!

「いただきまぁああああああああす!」

気合を入れて、チョコを頬張る。

味は、まぁまぁ美味しかった。不器用な魔王が作ったにしてはかなり上出来である。

きっと、たくさん練習したのだろう。結果、チョコ作成が楽しくなって、ついつい作りすぎたのだろう。

そう考えると、魔王が可愛くて仕方ない。

そして、俺が食べきれないと言えば、きっと魔王は落ち込んでしまうはずだ。

可愛いお嫁さんの笑顔のためにも!

俺は――やりきった。

「ご……ごちそうさまぁ」

山積みにされたチョコレート。その全てを食べきり、俺は地面に倒れこむ。

お腹は既にパンパンである。口の中はチョコレートの味と匂いで満たされており、当分はチョコレートの姿すら見たくないほどである。

「うむ! すごい食べっぷりであったぞっ……えへへ、頑張った甲斐があったのだ」

しかし、食べきった俺を見て魔王がとても嬉しそうに笑っているのだから、苦しさなんてないも同然だった。

さて、と。

メインディッシュを食べ終えて、お次はもちろん――

「デザートは、お前だー!」

「むむ!? し、仕方ない……我と言うチョコレートを、召し上がれ♪」

魔王をぱっくんちょするのだった。

俺と魔王は、今日も仲良しです――