ギルドに入って一週間がたった。

依頼を順調にこなし、ランクもDに上がった。

今日もいつも通り、依頼をこなしギルドに報告しに来ている。

「おい、あっちに綺麗なお姉さんいるだろ?皆あっちで依頼の処理して貰ってんだろうが。なんでわざわざ俺んとこ来るんだよお前は!」

あきらかにいらついた感じで俺に聞いてくる。

なんでって言われてもなあ。

「いや、俺だって最初は受付って綺麗なお姉さんがテンプレだろうと思ってたんだよ。でも、なんか、クレイマンが受付っていうのに慣れちゃって」

「慣れてんじゃねぇぇぇぇ!俺の仕事が増えんだろうがぁぁぁぁ!」

ギルド内に声が響く。

クレイマンていうのは俺が最初にギルドに登録した時にいた職員である。

登録した三日後、他の職員が戻ってきたのだが、俺は彼に依頼の処理をしてもらっている。

ぶつくさ言う割にきちんと仕事はするのがクレイマンだからだ。

「だいたい、仕事なんだから別にいいだろ。文句いうなよ」

来てはいけない理由などないはずだ。

「いや、俺は受付が本来の仕事じゃねぇんだよ。勇者パレードの日は他の職員が休みとってて人手が足りなかったからいただけなんだよ」 めんどくさそうに依頼の処理をしながら愚痴る。

そのまま、仕事の愚痴を言い出したので適当に相槌を打っていると急にギルドの入口が騒がしくなる。

「あ、なんかあったのか?」

クレイマンが受付から身を乗り出し入口を見出したので、俺も振り返り騒ぎの中心を見るとそこには。

「すみません。通してもらえますか?」

俺の女神ことセシリアがいた。回りからは何故こんなところに勇者の仲間であるセシリア様がという声が聞こえる。

前世に行ったアイドルのライブに似た雰囲気だ。

いつもめんどくさがりつつも、自分のペースを崩さないクレイマンも少し動揺しているようだ。

彼女はゆっくり、俺に向かって歩みよってくる。

「今まで何の連絡もせずにごめんなさい」

頭を下げて謝罪する彼女の姿を見て俺を含めた回りのギルド員達は固まる。

クレイマンだけが固まらずにいつもの気怠そうな目つきで事の成り行きを見ていた。

「詳しい話は私の家でしましょう」

では行きましょうかと固まったままの俺の腕を引く彼女。

俺はそのまま、彼女に連れられ、ギルドを出た。

俺達が去った後、ギルドがすごい騒ぎになったとかは、どうでもいい話か。

ギルドから出ると、彼女が乗ってきたであろう馬車に乗せられた。

御者である男は俺を見て怪訝な表情をしていたが、セシリアが説明すると頭を下げて来た。

今は初めて乗る馬車に揺られている。

「本当はもっと早く会いに行く予定だったのですが、パレードやパーティー続きで中々時間がとれなくて……」

彼女はすみませんと頭を下げる。別に謝らなくていいのだが……

「いや、俺も初めて城から出て、憧れだった異世界生活満喫してたから。全然気にしなくていいよ」

「……そう言ってもらえると助かります」

なんだか、彼女がまだ落ち込んでいるので話を変えることにする。

「そういえば、よく俺のこと見つけることができたね」

「……最初はどうしようかと思いました。あなたの変装後の姿を私は知らなかったので。ですから、ここ最近でギルドに入った者を調べてみたのです」

なるほど、それは随分苦労をかけただろう。

「……ですが割と早くあなたを見つけることができました。」

あ、あれぇ?

「あなたは名前も変えず、容姿も余り変えていない……何を考えているのですか?」

「何を言っているんだ。ちゃんと変わってるだろう」

魔族の時の俺は容姿はそこまで化け者じみたものではなく、冴えない顔した人間のようなものだった。

問題点をあげるとすれば、額にあった立派な角と背中に生えていた黒い翼ぐらいだ。

「痛いのを我慢して、角を折って、翼をもぎ取りまでしたのに」

その気になれば再生するが、今は故意に再生しないようにしている。

「……それでもあなたの顔を私を含めた勇者パーティーは知っているのです。せめて、眼鏡ぐらいかけてください。」

そのまま、俺の変装について、論議をしていると急に馬車が止まった。

目的地についたのであろう、御者に声をかけられたので馬車を降りた。

「……うわ、でかっ」

俺の目の前に飛び込んできたのは大きな屋敷だった。門の前には兵士らしき人が二人いる。

馬車から降りて彼女と共に屋敷入ろとしたのだが兵士達に止められた。

「お嬢様、お帰りなさいませ。……その男は何者ですか」

持っている槍を俺に向けてくる兵士たち。おいおいやる気か?

「槍を下ろしてください!彼は私の友人です」

兵士たちは槍を下ろす。不満がまだあるようだが、セシリアには逆らえないのだろう。

兵士たちの視線をひしひしと感じながら俺はセシリアに連れられ屋敷に入っていった。