Yuusha Party no Kawaii Ko ga Ita no de, Kokuhaku Shite Mita (WN)

I went to the ghost exorcism with my favorite kid.

「くよくよしてないで、頑張りなさいよ」

不安げにしていることを見抜かれたようだ。

「わかってるよ」

「依頼だからふざけろとまでは言わないけど、少しは楽しそうにしなさい。あんたが主催したんだから」

「お、おう」

「どうかしましたか?」

「い、いや。今日の依頼について打ち合わせをしてただけだよ」

今は狭い馬車の中にいるのだから、ひそひそ話にも限度がある。

乗ってからずっとハピネスが怪しむかのように視線を送ってきているし。

集合していた時から話していたせいか、セシリアとじゃなくてミカナと隣り合わせに座っちゃったし。

駄目だしもされて……巻き返せるだろうか。

「打ち合わせですか。私とハピネスちゃんも混ぜてもらって良いですか?」

「ああ。もちろん……いてっ」

わき腹に痛みが走る。つねられたような痛みだ。

おそらく、隣にいるミカナの仕業だろう。

俺が何かやらかしたぞというアピールかもしれない。

何がいけなかったのか知りたいが、今は聞けないし、馬車から降りた時にでも聞くか。

「……大丈夫ですか?」

「ははは。何でもない……」

ミカナと打ち合わせした時とほぼ同じ予定を話す。

ハピネスが加わったが、ハピネスは中、遠距離タイプなのでミカナと同じサポートに回ってもらう。

「……よろ」

「セシリアのメイド? 確か剣士と……っ!?」

今度は俺が肘打ちをする。

今はハピネスにレイヴンの名は禁句だ。

ぎろりと睨まれたが、さっきお前だってやったろ。

これでおあいこだ。

「……何?」

「……ごめんなさい。何でもないわ」

「……そう」

会話は終了し、馬車の中が静かになった。

会話しようにもネタが思いつかない。

こういう時にポンポン会話のネタが出てきたらいいのだけど。

アンデッドが住み着いている屋敷は王都からさほど離れていないので、会話が途切れても気まずくなることなく目的地に着いた。

「ちょっと、こっちきて」

馬車から降りると早速ミカナに呼び止められた。

馬車での駄目だしタイムかな。

セシリアが御者と話している間に、少し距離をとる。

「で、何か俺やったか?」

「ええ。アタシと話してた時、打ち合わせって言ったわよね。あの言い訳はアウトよ」

「え、なんで!?」

打ち合わせは本当のことで嘘はついていなかったぞ。

ただ、依頼の打ち合わせじゃなかっただけだ。

「セシリアとメイドの子はぶって、アタシたちだけで打ち合わせしていたら、良い印象持たれないでしょう。他愛ない会話で良かったのよ」

「こ、細かい……」

そんな些細なことまで気にしなければならないのか。

「あまり気を遣いすぎるのも良くないでしょうけど、好きなら頭の片隅ぐらいには置いておきなさい」

「なるほど、わかった」

「ならいいわ。……それで、アタシに肘打ちした理由を聞こうかしら?」

「あー、それは、まあ……とりあえず、ハピネスの前でレイヴンの名前は禁句で頼む」

「何かあったの?」

パーティーを組んでいた仲間だからか、多少心配しているのか。

茶化そうとしているわけでないのが、目を見ればわかる。

しかし、詳しい事情を語るわけにはいかないな。

「悪いけど、ノーコメントで」

「……ふぅん? ま、剣士のことだし、聞かれたくないんでしょ。アタシも無理には聞かないわ」

「助かる」

「……集合」

俺がミカナに頭を下げていると、ハピネスがやってきた。

そんなに話していたつもりはないのだが、二人を待たせていたみたいだ。

「呼びにきてくれたのか。ありがとな。今行くわ」

「……不気味」

「ちょっと、待て。今のやり取りのどこに不気味さがあったよ」

「……隊長、御礼、謝礼」

「俺が誰かに御礼言ったり謝ったりすることが不気味だと」

「……正解」

ハピネスは親指をぐっと立てアピールしてきた。 ハピネスの中で俺は礼儀知らずだと思われているらしい。

「……って、正解じゃねーよ。俺はちゃんと礼儀はわきまえているっつーの」

俺の発言にハピネスは目を丸くし、呆然した表情を見せる。

こいつとは本当に一度、ゆっくりとお話をした方がいいかもしれない。

「あんたたち、漫才はその辺にしなさい。セシリアが待ってるわ」

「……了承」

「あっ、ハピネス。自分からケンカ売っておいて逃げんな!」

「……こんな調子で大丈夫かしら」

逃げたハピネスを追っていった俺に、ミカナのため息混じりの愚痴は届かなかった。

「よし。さっさとアンデットを倒そうぜ!」

「……おー」

「あんたたち、仲良いのか悪いのかわからないわね……」

俺の謎のテンションに答えてくれる辺り、さすがハピネスと思う。

気なんて遣わなくても良いのではないだろうか。

「二人とも、館に入る前に注意事項、作戦について確認しましょう」

突っ走ろうとしていた俺とハピネスにブレーキをかけるセシリア。

危うく今回の目的を忘れて好き勝手に暴れるところだった。

……そんなこと言ったら、ミカナにまた減点されるので、口が裂けても言わない。

「作戦って、さっき俺とセシリアが前衛。後衛をミカナとハピネスに任せるんじゃなかったか?」

「はい。しかし、それとは別に私から注意事項があります」

「……注意?」

「まず、館はアンデットの住み処になっているとはいえ、ミネルバの不動産が所持している物件の一つです。アンデットは浄化、でも館はボロボロでは意味がありません。ですので、威力の高い魔法は禁止でお願いします」

「確かに暴れすぎて館をボロボロにしたら意味がないもんな。下手したら館の修理費に依頼の報酬が持ってかれる可能性があるし」

「……封印?」

ハピネスが自慢の扇に手をあてる。

風を起こしつつ、回りの敵を切り刻むというハピネスの羽がふんだんに使われた贅沢な扇だ。

「そうだな。それを使ったら、壁や床にキズをたくさんつけかねないし」

「……了承」

まあ、ハピネスは魔法もそれなりに使えるから扇がなくても大丈夫だろう。

「火事になる可能性があるので、雷、炎属性の魔法は禁止でお願いします」

「そりゃそうだ」

最悪、俺の魔法で消火出来るけど……燃えた時点で失敗だよな。

セシリアによる注意事項の説明も終わり、館の門の前に立つ。

アンデットの住み処となっているからか、変な雰囲気を感じる。

「では、行きましょうか」

セシリアは先陣きって、ずんずんと門を開けて館の中へ進んでいく。

……聞いてはいたけど、一切オバケ怖いみたいなテンションではないな。

俺もセシリアに続いて館に入ると、早速、アンデット二体のお出迎え。

もうセシリアは杖を構えて魔法を唱えている。

「≪ホーリーサークル≫」

光の初級魔法、ホーリーサークル。

殺傷能力はなく、光の円の中にいる者を浄化する魔法だ。

アンデット二体はセシリアの魔法により、うめき声をあげる。

光の円が消えるとアンデットの姿も消えていた。

「さすがね。アンデットの影も形もないじゃない」

確かに体はもちろんアンデットが着ていた服すら消えている。

「アンデットって浄化したら、服とかも消えるんだな」

「そうですね。それは、浄化する僧侶の力量にもよるのですが……」

「じゃあ、全部浄化したセシリアは凄いってことか」

ホーリーサークルの発動も早かったし、アンデットが跡形も残らないときたからな。

「いえ、私はまだまだ修行中の身ですよ」

「そうなんだ。俺からしたら、セシリアは充分すごいと思うけど」

慢心してはいけないということだろうか。

セシリアは生きている内はずっと勉強っていうタイプかな。

「そう言ってもらえるとなんだか嬉しいですね」

「実際すごいなあと思ったからさ。よし、依頼に誘ったの俺だし、頑張るかな」

「私も負けませんよ」

軽くストレッチして、セシリアと館の奥に進む。競うわけではないが、セシリアに負けないくらい俺も頑張ろう。

「……意識しなければ良い雰囲気作れるじゃない。考えたら駄目な性格なのかしら」

「……同意」

呆れられているとは知らない俺。

二人が来た意味はと問いたくなるくらい、俺とセシリアでアンデットを浄化していく。

俺が水属性魔法で足止め、または一ヶ所に集めてセシリアの≪ホーリーサークル≫で一気に浄化。

自然な連携でスムーズにアンデット浄化は進んでいく。

「セシリア、疲れてない? ずっと≪ホーリーサークル≫使っているけど」

「≪ホーリーサークル≫は僧侶にとって必需魔法ですから。沢山練習して魔力の効率を上げていますので、大丈夫ですよ」

「そうか。でも一応、水分くらいは取っておいたほうがいいと思う」

俺は水を入れたボトルをセシリアに渡す。

「ありがとうございます」

「ちょっと……」

「ん、どうかしたか」

ミカナに声をかけられたので、振り向く。

何かあったのだろうか。

「さっきから思ってたんだけど……あんた無意識?」

「何が?」

「そう、ならいいわ。何でもない」

「いや、気になるだろ。なんだよ」

「……鈍感」

ハピネスに冷たい言葉を浴びせられた。

二人の俺に対しての視線がおかしい。

鈍感呼ばわりされるし……本当になんでだ。

「三人とも、何かありましたか?」

水を飲み終えたセシリアが聞いてくる。

三人で固まっていたら、心配もするか。

「セシリア、あんたも大変ね」

「え?」

「ま、アタシも結構な苦労人だとは思っていたんだけど。セシリアには負けそうだわ」

「それは、どういう意味ですか?」

「いずれわかるわよ。さて、帰るのが遅くなるのは嫌だし、行きましょうか」

「……活躍」

ミカナとハピネスが先に進んでいく。

前衛は俺とセシリアだったはずだけど。

「ミカナの言葉。どういう意味だったのでしょうか」

「……わからん」

二人で首を傾げ、お互いを見る。

頭をひねってもわからなかったので、先に行った二人を追いかけた。

「あ、来たわね。多分、この部屋の奥にボスっぽいやつがいるわ」

「なんでわかるんだ?」

「……気配」

「そんなどこぞの達人じゃあるまいし」

俺は嗅覚強化したらどこに誰がいるかわかるけどな。

「館もある程度探索して、あとはこの部屋のみ。アンデットがこんな自然と一ヶ所に密集するわけないから、統率者がいるのは確実。だったら、まだ調べていないこの部屋でしょ?」

「ちゃんと理由があったのか」

「アタシは気配でわかったなんて一言も言ってないわよ」

確かに言ったのハピネスだったな。