Alchemist Yuki's Strategy
Episode 18: Goblin Destruction III
浄化中は暇があったので、色々な疑問の解消に勤めた。
先ず、ゴブリンキングの急激なレベルアップだが、理由はおそらく負の侵食だと思われる。
鑑定した時は迷宮化が前面に出ていたが、負属性を良く観察して見た所、ゴブリンキングは最初こそ帯びる負属性は少なかったものの後半は酷かった。
負の力がゴブリンキングを侵食して行く毎にレベルが上がって行っていた。
逆に、黒妖精さん達は負を浄化して行く毎にレベルが下がっていた。
この事から、負の力は魔物を強化する様な作用があると考えて間違い無い。
だからと言ってその力を利用しようとは思わないけどね。
また、ゴブリンの急速進化についても、その解を得る事が出来た。
『マレビトを殺すとより早く強くなれる、早いの。これ、強者の中では常識なの、常識なのよ?』
との事。
現在存在している強者の殆どは、マレビトを虐殺した者か虐殺した者を殺害した者、或いはマレビトに使役されていたりマレビトと共に戦った者なのだとか。
思えば、アイはともかくとして北の草原と東の浜のボスは進化していたし、南のワイルドドックの森ではボスだったネロが進化していた。北の森では浅い場所にいる筈の無い強力な蛇がいた。
今、プレイヤー達は実戦経験が殆ど無い状況で死にながら攻略を進めている。
これは不味いと考えるべきだろう……だろうか?
……プレイヤーが死に敵を強化する、その強くなった敵を僕が倒したりテイムする。
…………うむ、まぁ……プレイヤーの件はしばらく放置で良いだろう。
糸使いのお姉さんの正体も分かった。予想通り、蜘蛛の魔物らしい。
リェニさんの解説によると『ロード・オブ・ナイトメア』と呼ばれる蜘蛛の魔物の上位種らしい。
要は名無しの新種。
本蜘蛛は自らの種族を『奈落魔王蜘蛛(アトラクナクア)』と名乗っているらしい。
名前はアルネア、そのままアルネアと呼ぼう。
尚、アルネアはマレビトを虐殺した魔物を殺害した口で、マレビトを殺した事は無いらしい。
彼女は、古い友人の気配を感じて追い掛けて来たが行き違いになってしまったらしく、仕方なくリェニさんの所へ来た所でこの戦いに参加したのだとか。
僕を抱き締めて匂いを嗅ぎ『間違い無い、間違い無いのね……』と言っていたのだが……何だったのだろうか?
その上ウルルをチラチラ見て、更にガン見し、そして匂いを嗅ぎに行き、唸りながら首を傾げていた……何なのだろうか?
「ーーこの子で最後だね」
ハイペースで『祝福』を使い、残るは最後の1人だけ。
やはり数が多かったので幾らかの魔石を消費してしまったが、必要経費である。
「あぁ、ユキ殿、この恩には必ずーー」
「ーー堅いの。助けてくれてありがとうなの、感謝してるのよ? 妖精の国に来た時に御礼をするの、今は何も持って無いから御礼出来ないのね」
全個体を確認したが、特に目立つ外傷は見られなかった。
さっさと浄化してあげよう。
「行けたら行くよ、『祝福』」
《【王国クエスト】『妖精救援』をクリアしました》
【王国クエスト】
『妖精救援』
参加条件
・『妖精女王(フェアリークイーン)』と共闘する
達成条件
・『妖精女王(フェアリークイーン)』の目的を達成する
失敗条件
・『妖精女王(フェアリークイーン)』が死亡する
達成報酬
参加者報酬
・スキルポイント5P
参加者貢献度ランダム報酬
貢献度92%ーー100%
・防具『森妖精のお守り(アミュレット)』
・スキル結晶『指揮』×5
・スキル結晶『統率』×5
・スキル結晶『連携』×5
・スキル結晶『軍略』
・スキル結晶『捕獲』×5
エクストラ評価報酬
救済者
執行者
希望の欠片
・スキルポイント67P
・スキル『妖精使役』
・スキル『聖なる光(ホーリーレイ)』
・スキル『希望の欠片』
全体報酬
・進化条件の緩和
ふむ、王都周辺のクエストはクリアするとレギオンを作るのに必要なスキル結晶が手に入る様だが……やはりパーティー単位での行動は難しいのだろう。
……それを僕等が独占しているせいでプレイヤーの死亡率が上がっているのだろうか?
まぁ、良いか。
新しく入手したスキルは『軍略』『捕獲』『妖精使役』『聖なる光(ホーリーレイ)』『希望の欠片』。
『軍略』『捕獲』『妖精使役』がそれぞれの補助スキル。『聖なる光(ホーリーレイ)』は『解呪』や『祝福』と同じ魔法っぽいスキル。『希望の欠片』は……効果不明のスキルだ。
防具は、妖精さんを象った装飾が施された金属のバレッタで、翠色の宝石がキラリと輝いている。
浄化して気を失った妖精さんを妖精さんに渡して、スキル結晶も防具も纏めてインベントリにしまう。
「さて、2人はこの後どうする?」
妖精さんの問題は終了したが、ゴブリンキングの方は全く進んでいない。
「私は同胞を国へ運ばねばならない」
「私はその護衛、守るのよ?」
まぁ当然か、妖精さん達の消耗は割と大きい。ゴブリンキングの方は僕が処理すれば良い。
「そう……それじゃあまた」
「うむ……すまない」
「……危なくなったら逃げても良いの、良いのよ?」
「ふふ、心配しなくても良いよ、その時はそうさせて貰うから」
配下の内大きい子やまだ弱い子を送還し、妖精さん達が霧の森へ消えていくのをニコニコしながら見送った。
妖精さん達が完全に見えなくなった後、表情を消してゴブリンキングが逃げ込んだ洞窟へと振り返る。
暗闇に染まる洞窟には、地下墓地(カタコンベ)と同じかそれ以上の禍々しさを感じる。
放置し過ぎたのかもしれない。
「……さて、行こうか」
「ウォン!」
気を引き締めて行こう。
《【天命】『負の欠片を抹消せよ』が発令されました》
【天命】
『負の欠片を抹消せよ』
・備考
導かれし者、加護を授ける、負の欠片を抹消せよ。
…………なぬ……?
ーーGruAAaaaaaaa‼︎‼︎
……む?