Alchemist Yuki's Strategy

Episode 8: Securing Human Resources

ヤシヤ 犬亜人 LV2 状態:空腹(小)

キカ 猫亜人 LV3 状態:空腹(小)

見習いメイドぇぃあ、改めレリアが隠していたのは。亜人の子供達であった。

亜人の容姿は殆ど動物そのものに見えるが、猫亜人とレイーニャを比べると猫亜人の方が体が大きく、その上骨格も人型の物。

この子達は、先の負との大戦で何らかの理由でこの大陸に置いてかれてしまった子供達らしい。

そもそも、ルベリオン王国は多くの種族を平等に扱う国で、負との大戦の前は獣人含む多くの種族が暮らして居たらしい。

負との大戦でアルバ大陸が滅亡の危機となり、殆どの種族はこの大陸とは別の大陸にある母国に送還された。

その際に、一部の人族を難民として受け入れて貰えたらしい。

道理で廃墟や空き家が多い訳である。

大戦以来アルバ大陸周辺の海には強力な魔物が住み着く様になり船を遠洋に出せないので、この子達を親元に届ける事が出来ないのだとか。

レリアは、廃墟付近で浮浪児になって居た亜人の子達を、従士爵の権限を利用して街障壁の中に連れて来て、人があまり来なくて安全なこの場所で匿って居たらしい。

周辺の屋敷の庭で大量発生して居たプァリボルは、レリアとこの子達が栽培して居た様だ。

確かにプァリボルは、生命力が強い植物で放置して居ても勝手に育ってくれる。

ローコストでローリターンが見込めるし、不足しがちな栄養素を簡単に取得出来るのだ。

……と、言う訳で。

この子達は僕の屋敷で侍従として雇う事になったのである。

彼ら彼女らは、獣亜人の特徴としてルベリオン王国語が合わず舌足らずとなっているだけで、年齢的には最低でも六歳、最高で十歳との事。

一方レリアは、見た目が子供なのに年齢は僕らと同じ。同業者であった。

今まではレリアのお給金とプァリボルで糊口を凌いでいたが、幾らレリアが従士爵持ちの名誉貴族とはいえ一人の給料で十数人の子供達を養って行く事は出来ず、城内の残飯に手を出しても間に合わなくなって来ていたらしい。

幸いな事にプァリボルのお陰で栄養失調みたいな事は無かった様だが、中には重い病気を患って死に掛けの子供もいた。

勿論、上級ポーションをぶっ掛けて直ぐに治した。

下級のポーションでは病気や部位欠損は治らない。中級ポーションなら病気は治るが部位欠損は治らない。上級ポーションになると、何にでも効く強力な万能薬なのである。

今日レリアが休憩時間にここへ訪れたのは、今夜のパーティーで大量に出るであろう残飯を運ぶための作戦の最終段階を通達していたらしい。

帰る途中で僕達が現れたと。

ともあれ、獣亜人の子は僕が雇い衣食住を保証、レリアは子供達に従者としての技術を教えると言う契約で纏まった。

差し当たって、彼らが使っていた建物を補修し、食料を大量に渡しておいた。

「ありがとうございますっす、ユキ様。ほらお前達も挨拶するっすよ」

『あいあとおあいます!』

「はいはい、どういたしまして」

しばらくはその家に住んで貰い、土地や建物の整備が終わったら本格的に仕事をして貰おう。

「ふむふむ、確かに微(かす)かな不浄を感じるね」

「嫌な気配だ、何かいるのか?」

「まぁ、それを確かめにね」

そう言って僕は、件の館へと足を踏み入れた。

館の中は、本当に長い間人が使っていないらしく、埃にまみれていた。

入り口には、豪華な階段があり、その下に甲冑が二つある。

鉄の甲冑 品質D レア度3 耐久力C

備考:鉄の鎧。古びている。

合成獣(キメラ)クリッター LV1 状態:監視

「ほうほう……」

「ふむ、あまり綺麗では無いな……」

入って早々に周囲を鑑定して居たら、甲冑のあたりで魔物の情報が出た。

その他にも、カーテンや壺等にそうと分からない様に気配を遮断する護符が隠されている。

爺様やザイエの感知能力がどの程度かは分からないが、これが放置されていると言う事は感知出来て居ないと言う事だろう。

これはちょっと危険な香りだ。幸いな事にティアは気付いていない様なので、ティアを城に置いてきて改めて確認しに戻ろう。

「帰ろっか」

「む? 分かった」

はてさて、一体何が潜んでいる事やら。

城へと戻り、早速地下書庫へと向かった。

お楽しみの時間である。

書庫も宝物庫と同じで、特に掃除の手が入っている訳では無い様だった。

書庫の本を纏めてコピーし、いつでも読める様に整理、分類する。

遺跡の図書館の時も、爺様の図書館の時もそうだったが、これには多少時間がかかる。

その上、ダブりは処理していかないといけないので色々と面倒である。

本は、その全てがルベリオン王国語と言う訳では無い、後で解読する必要があるだろう。

ともあれ、もうそろそろ昼食の時間である。

「……それじゃあティア、僕の体、よろしくね?」

「っ!? ……うむ、任せろ!」

昼食の時間には少々早いが今夜のパーティーの時間を考えるに、早め早めに行動した方が良いだろう。

「クローズゲート」

意識がブツリと途切れた。