Alchemist Yuki's Strategy

AS Double Swordsman Tak Struggle [Episode.1] Beta Island Struggle Thirty-eight

この状況、コウキはどんな判断を下すのか。

新たな指示を待つと、唐突に戦場で火の手が上がった。

赤の騎士は最前線で蟹と戦っているので、これはおそらくコウキ達だろうな。

「はあぁぁっ!!」

戦場に響き渡るその声は、さっきまで指示を飛ばしていたコウキの物。

気合の大声と同時に炎が吹き上がり、無傷だった1匹の大蟹が両断された。

また一方では、先の戦いでやっていた様にテルマが火を纏う剣を振り回し、大蟹相手に一方的な戦いを繰り広げている。

佐助はかなり小回りが利く様で、火を纏う短刀を振るって大蟹をバラバラにして回っている。

後衛の二人も各武器に火を纏わせ、大蟹と単独で戦闘していた。

俺らの嵐(テンペスト)と似た様な物なのだろう。

コウキ達の切り札と言う訳だ。

コウキ達は炎の武器であっという間に大蟹を討伐ないし鋏を落として無力化すると、後は任せたと言う言葉を残して前線に向かった。

嵐(テンペスト)と同じでMPの消費が激しいのだろう。

今の内に勝負を決めようとするのは合理的だ。

俺もさっさと鋏の無い大蟹を殲滅して前線に向かうとしよう。

複数のプレイヤーと協力して大蟹を潰して回り、全てを片付けた後は、身内以外のプレイヤーに防衛をする様に伝えてから前線に向かった。

「タク、テンペストを使うのか?」

「状況次第だな」

「あまり楽観視出来る状況には見えないのだけど……」

「あの大きいのがキングでしょうか?」

「ほんとに……おっきいですねー……」

超巨大な蟹は赤の騎士とほぼ互角の戦いを繰り広げており、コウキ達は他のゴーレムと協力して取り巻きの巨大蟹と戦っている。

現時点ではゴーレムの防御力の高さとコウキ達の参戦によってなんとか前線を維持している様だが、コウキ達のMPが尽きれば数で勝る巨大蟹の群れが騎士型ゴーレムを押し始め、前線が崩壊するだろう。

「……取り巻きから屠って行こう」

「だな、テンペストを使わないならあのでかいの相手じゃ足手纏いだろうし」

「では近いのから片付けて行きましょう」

「襲撃の間隔が短くなって来ている様だから手早くやった方が良いわね」

「パパーッとたおしちゃいましょう!」

話が纏まると直ぐにアマネさんが矢を放ち、一番近くにいた蟹の目玉を貫いた。

其処は巨大蟹2匹でゴーレム1体を攻撃していた所で、アマネさんに片目を潰された巨大蟹は此方へと向かって来た。

「行くぞ!」

「おう!」

「はい!」

「行きます!」

「はい、行ってらっしゃい」

「はえっ!?」

変なやり取りをしている場合か。

「らっ!!」

一番前に出たアランは、巨大蟹の巨大なハサミによる一撃をわざと正面から受け止めた。

地面が砂浜な所為で踏ん張りがきかない筈だが、例の剛術を使ってほんの僅かな間拮抗する事に成功していた。

俺はその真横を駆けると、低い位置にある鋏の節を狙って刀を大上段に構えた、そしてーー

「っ!!!」

迅斬術を使用した幹竹割は、物の見事に蟹の鋏を切り落とした。

これで片目に続いて鋏を一つ、どんどん行くぞ。

即座に向き直り、蟹の足元に滑り込む。

其処には既にユリちゃんがいて、蟹の足を低い場所から順に切り捨てていた。

セナは蟹によじ登りもう片方の鋏を取りに行き、アマネさんはちょうど今もう片方の目を射抜いた様だ。

強酸の泡を吐き散らして暴れようとする蟹は最終的に手足を全て切り落とされて行き、動けなくなった所で絶命した。

「次っ!」

「おうよっ!」

「行きましょう!」

「行ってらっしゃいませ?」

「ふふ、セナちゃんもまだまだね、行くわよ」

「ふぇ?」

いやもう、アマネさん何をさせたいのか分からないんだけど……余裕あるな……。