Alchemist Yuki's Strategy

Episode 14: To Workout Island

顔には出さずにしょんぼりしているドリアードを撫で回し、ついでにアルナンと言う名前を付けた。

農場にはアルナンだった大樹がまだ残っているが、それは所謂抜け殻の様な物らしい。

親和性は非常に高いが、何方かが潰えても特に影響は無いとの事だ。

アルナンには農場で頑張って貰う事となった。

拠点の島でやる事は、これで全て完了である。

帰りは一瞬だ。

西の森はダンジョンの一部なので、農場から其処まで行けば直ぐに遺跡へ転移できる。

夕食の時間までに鍛錬島へ移れそうである。

鍛錬島へ転移し、アルネアに体を預けて夕食を食べに向かった。

アヤはまだ夕食を食べていなかった様なので、書き置きを残し、寝る準備や他の雑務を終えてログイン。

戻って来たら、ルェルァが起きていた。

ルェルァは結晶に閉じ込められていた様に見えたのだが、今は結晶の外にいる。

その上、結晶片がルェルァの周りに浮遊しており、ルェルァはそれを自由自在に操れる様である。

「ルーねぇちゃーん! 凄いよっ!」

「ふむ、操作能力はかなりの物ね。結晶の性質は宝石魔法と同じでーー」

「お母さーん! みてみてっ!」

「いや、だから私はお母さんではなくてだな……」

「わぁいっ!」

「話しを聞かない子なの。全く通じないのよ……」

アルネアの言葉が現状の全てである。

取り敢えず高速で飛び回っているルェルァを捕獲して、魔力譲渡で黙らせる。

すると、凄まじい勢いで高速回転していた結晶片が停止して、ゆっくりと元の大きな結晶に戻って行った。

「ふぇ……」

「さて……さっきも説明したけど。これから迷宮攻略を進めるよ」

「流石ユキなの……容赦ないの」

「ユキからも言ってやってくれないか? 私はお母さんじゃあないと何度も言ってるんだが……」

「化け物じみた知覚能力だわ……」

今回攻略するのは、『火山の迷宮』『森の迷宮』『海の迷宮』『洞窟の迷宮』『奈落の迷宮』『雲の迷宮』の6つ。

生物には適性と言う物があるので、僕は森の迷宮を進ませて貰おう。

現在動かせる戦力は、人型の子達に加えてワンワン軍団、狼達、リッド、ネロ、ラグ君改めベゥ君。

火山と奈落の迷宮にケラウノスドックを半分ずつ、海と雲の迷宮に聖天狗を半分ずつ、新参の6体以外を洞窟の迷宮に派遣した。

その時、ルカナが何かに驚いたらしく、目をまん丸にして固まっていた。

何やら、あり得ない。とか、これほどの戦力が一つ場所に……。とか呟いていたが……驚く程の戦力では無いだろう。

何せ、吸血鬼や悪魔、天使、果てはアンデットさえも、あれだけの戦力を誇っていたのだから。

ともあれ、森の迷宮の探索、開始である。

「うむ、森だ」

街中の広場にある森の迷宮に入ると、出た場所は森の広間であった。

空には月が見え、森は暗闇に支配されている。

森の中からは、虫や鳥の鳴き声が聞こえて来た。

おそらく此処は異界迷宮とやらだろう。

地図を見ると、白紙では無く、僕の感知領域内が描かれていた。

それによると、敵として出てくる魔物は、そのほぼ全てが動物型、レベルはおおよそ15〜25くらいで、一番高いのがレベル30のフォレストウルフであった。

取り敢えず、新参の子達を召喚する。

先ずは、デミレッサースピンクス。

彼女は、生前何処かの国で王族の近衛隊長をやっていた様なので、アッセリアやルーレンみたいに己を取り戻す可能性がある。

形状は、下半身にライオンの胴体がついており四肢で大地に立っている。

上半身は女性の体で、本来腕があるべき部分からは翼が生えている。

人間部分の女性は、長い金髪に碧眼の美女で……裸だ。

程よく鍛えられた白くハリのある肌と、悲しい程に無いもとい慎ましやかな胸元が完全に露出されていた。

取り敢えず、死神のボロボロローブを羽織らせておく。

あんまり激しく動くと中が見えてしまう危険性がある。かと思ったが、闇色の靄で中身が見えない仕様になっていたので、一先ず安心である。

続いて、デミレッサーマンティコア。

マンティコアと言えば、老人の顔、ライオンの胴体、無数の棘がある尾、と言う姿を思い浮かべる。

実際には、鋭い目付きをした茶髪のイケメン顔で、ライオンの胴体、蝙蝠の様な翼、蠍の尾、と言う姿である。

彼も、スピンクス同様王族の近衛隊長をやっていたので、生前の記憶を取り戻すかもしれない。

尚、2人は翼を持つが長時間の飛行は出来ない。

魔力の消耗スピードが早過ぎる為である。

理由はおそらく『飛行』の能力が完全に備わっていないから。

進化すれば長時間飛行する事も出来る様になるだろう。

次に、デミレッサーキマイラ。

この子の姿は、ライオンの胴体に蛇の尾、背中からは山羊の頭部が生え、その上、竜の様な翼が生えている。

デミレッサーグリフォンは、ライオンの胴体に鷲の頭と翼を持つ魔物で、前足は鋭い鉤爪が付いた鷲の物となっている。

これの近所種に、ライオンの部分が馬に変わった姿のヒッポグリフと言うのがあるらしい。

この両人も、翼はあるが長時間の飛行は出来ないらしい。

続いて、デミレッサーアメミット。

彼は、頭がワニ、上半身がライオン、下半身がカバと言う姿をしている。

見た目以上に俊敏らしい。

デミレッサータラスクは、竜の頭にワニの様な体、背には鋭い棘が幾つも並ぶ長い甲羅を備え、足の数は6つ、尾は棘のついたメイスの様になっている。

なんとも攻撃的な姿である。

彼らには、各自散会し、地図を埋めるのを手伝って貰う。

一応飛べるのが4体もいるので、地図は直ぐに埋まるだろう。

次の階層への入り口は、案外直ぐに見つかった。

其処へ行くまでの間は、新参の子達の戦いを接続(コネクト)で観戦しながらの自動歩行(オートパイロット)で進んだ。

何せ、戦力過多である。

アルネアが警戒していれば全く問題なしであった。

尚、ドロップするアイテムは、自動回収(オートコレクト)でインベントリに回収されて行くので、無駄が無い。

この自動回収(オートコレクト)は、色々と細かく調整が出来るので、かなり便利である。

先ずはキマイラの戦いを観戦。

キマイラの相手は、真っ赤な体毛を持つ熊の魔物である。

強そうだが、しかしレベル差が酷い。

四肢で熊を抑えつけ、ライオンの頭が食らい付き、蛇の尾が毒を送り込む。

山羊の頭は魔法が使える様で、火の玉を熊へ放っていた。

熊は碌な抵抗をする事も出来ずに息絶えた。

次、グリフォン。

グリフォンは、他の子達よりも滞空出来る時間が長く、高空からの急降下で大きな赤い鹿へ襲い掛かり、重量と腕力で叩き潰した。

その際に鉤爪が大きく胴体を抉り、鹿は即死した模様。

次はマンティコア。

彼の獲物は、これまた赤い色をした大きな虎。

それを前脚で抑えつけ、蠍の尾を突き込んでいた。

どうやら此方も魔法を使える様で、闇属性と思わしき黒い球体を瀕死の虎へ打ち込んでいた。

続いて、スピンクス。

彼女もまた、赤く大きな獲物を仕留めていた。

獲物は大きな狐。

それを鋭い鉤爪でズタズタに引き潰していた。

タラスクは、足が6つある為か案外素早く、硬い甲殻を持つ為木々を薙ぎ倒しながら進み、開けた平原で赤い兎を轢き殺した。

アメミットは、フォレストウルフに遭遇したらしく、複数のグラスウルフやウルフ、マギクラフトのグラスウルフを一気呵成に捻り潰し、殲滅していた。

フォレストウルフはワニの咬合力を前に無残にも肉塊になった。

どうやら他の迷宮でも、分かりやすい色違いの魔物が生息していた様だ。

海では黄、火山では青、洞窟は緑、雲は黒、奈落は白。

そして、それらの魔物を倒す事が、次の階層へ進む為の鍵であるらしかった。

数は5匹、既に全ての迷宮で討伐済みである。

「見えて来たわよ」

「ふむ、あれが次の階層とやらへの入り口か?」

「楽勝だったの、暇なの」

「ルェルァも暇なの……ふぁ……」

まぁ、この程度の迷宮なら一層進んだくらいでは戦力もそうそう変わらないだろうし、最後まで暇な時間が続くと思うよ。