Alchemist Yuki's Strategy
Episode 16: Who Stands at the Top of the Tower
配下に指示を出し、各迷宮に分配する。
ケラウノスドックを山と雪原、聖天狗を沼と砂漠、その他の子達を全て湖に送り出し、僕等は塔の迷宮の攻略である。
まぁ、然程苦労はしないと思う。
◇
「む?」
塔の迷宮に転移すると、其処は光に溢れていた。
灯り石よりも強い光源を使っている様だ。
今いる場所は塔の一階らしい。
遺跡にあった塔よりも広い空間、上へ続く螺旋階段、そして外に繋がる四方の門。
「……外に行ってみようか」
塔の高さを測る為にもね。
「塔の迷宮でなんで外に行くのよ……」
「行ける場所には何かある筈なの、定番なの」
アルネアの定番と言うのがどう言う意味かは分からないが、わざわざ外に出られる様な作りになっているのなら外に何かしらあるのだろうとは思う。
◇
塔の外は、何も無い荒野であった。
「ひろーい!」
「緑が、無いな……」
見渡す限りの岩肌。
それにルェルァは無邪気な反応を見せ、リェニはしょんぼりしている。
外側に何も無いと言う事は、やはり外から塔を見て高さを測る為にあるのだろう。
振り返って塔を見上げる。
どうやら、この塔は階層毎に門と同じくらい大きな窓が付いているらしく、灯りが外に漏れでて辺りを照らしていた。
見た限りだと、塔は全8階層。
その一層毎に少し強い魔物が配置されている様だ。
と言うか……。
「外から登れそうだね」
「簡単に登れそうなの、直ぐ上まで行けるのよ」
塔の外壁には、敢えて登りやすそうに作られたとしか思えない不自然な突起が沢山付いていた。
その不自然な模様は、塔の天辺まで続いている。
ラスボスは塔の最上階にいるんだね。
「……行ってみようか」
◇
サンダーバード LV150 状態:
塔をよじ登る。……のは面倒なのでルカナに運んで貰っていると、頂上の窓を覗ける場所まで来た所で唐突に、晴天の霹靂が起きた。
目の前に現れたのは雷を纏った青白い鳥。
サンダーバードは、現れるや否や雷の槍を放って来たので、即、ご退場頂く事となった。
「一体何だったのだ」
「キラピカーってなったね!」
「ショートカット禁止用のボスなの、強くなって再挑戦なの!」
「……うん、まぁそんな感じだったかな?」
「サンダーバードを見れるなんて……凄い幸運な事なのよ? それを……」
ふむ……確かに、サンダーバードは雷雲に生息している。と言う記述があるくらいだしね。
あと、アルネアって何だか変な知識があるみたいだよね。
しかし……。
「……ショートカット禁止って言うのはやっぱり妙だ」
「そうなの? 間違えたの?」
何せ、この塔の最上階にいるボスはーー
下位火竜(レッサーファイヤードラゴン) LV70 状態:
ーーレベルが70だ。
覗いてみた感じだと、これ以上上に行く階段は無い。
それを皆に伝えた。
「確かに……それは妙だな」
「うん? みょー?」
リェニはコクリと頷き思案顔、ルェルァは言葉の意味を理解していないのかな?
先のサンダーバードは150。
感じられる魔力量もサンダーバードの方が強かった。
「製作者はよっぽど近道をして欲しく無かったのね」
「登りやすく作られている理由は何なの? ……嫌がらせなの?」
アルネアは嫌そうな渋い顔でそう呟いた。
ショートカットをさせない為のボスがこの迷宮のラスボスよりも強いと言うのはどう言う事だろう?
それが意味する事はつまり……。
「……もっと上に何かある?」
「……ふむ、そうね」
「……成る程……つまり隠し通路のボスなの、屋上に何かあるの」
そう考えるのが妥当だろう。
「ルカナ」
「ええ、分かってるわ」
僕達は、最上階へ入るのを急遽取り止め、その場所から更に上。
20メートル程上まで移動した。
そこにあった物はーー
「ーー闘技場?」
ーー開けた舞台だった。
「中央になにかあるな」
「像があるの、あれが隠しボスなの?」
中々に広く、何も無い舞台には、中央にポツンと一体の像が立っていた。
その像は竜を模した騎士の様な姿をしており、色取り取りの金属が使われている。
ーー極彩色の竜騎士。
取り敢えず鑑定。
? LV?
あ、これは駄目な奴だ。
今の僕のレベルは332。
詳細鑑定のおかげで、532レベルまでの情報を見る事が出来る様になっている筈だ。
おそらくだが、レベル650くらいまでなら名前を見る事も出来るだろう。
となると、このゴーレムらしき物のレベルは最低でも650以上。
今の戦力は、
ユキ LV332 状態:
ルカナント・グラシア LV351 状態:
リェニ・ローシェ LV384 状態:
ルェルァ・ローシェ LV519 状態:
アルネア LV? 状態:
それに加えて後は、
セバスチャン LV528 状態:
リアラ LV494 状態:
アスフィン LV423 状態:
それから、吸血鬼・貴種の上位クラスである先鋭メイドが20人、吸血鬼・貴種の中堅クラスであるメイドが50人。
……やれるかな?
今の僕の能力だと、アルネアをテイムする事が出来ない。
おそらく、詳細鑑定の能力限界が僕の支配できる限界なのだろう。
妖精二人をテイムしたのだとして、万が一アルネアが殺されてしまったらアウトだ。
やめておこう。
「戻るよ」
僕の言葉に、反対する声は出なかった。
目視すればこそ分かるが、像から感じられる力は尋常では無い。
やるなら、配下を全員引き連れて、万全の状態で事に当たった方が良いだろう。