Alchemist Yuki's Strategy

Lesson 27 vs. Impure Murderer Three Dead and Reaper Staggered

辺り一面に、水の次は闇が広がって行く。

僕の魔力の3割程を消費した闇は、濃度こそ死神の物には劣るが、規模では負けていない。

瞬く間に広がって行く闇の靄。

それは砂漠を照らす銀の威光を遮り、ワイズマンリッチ・ロードを飲み込んだ。

巨人の方は、大きさ的にちょっと無理があるので、胴体の幾らかを隠すだけに留まっている。

巨人に動かれては面倒だし、先に足を削っておこう。

僕は即座に血刃を操作し、巨人の片足に血の海を浸透させた。

そしてーー

「ふんっ!」

ーー抉り取る。

肉と骨と砂で出来た巨人は、片足を捥がれて体勢を崩し、轟音を立てて転倒した。

その際に、明後日の方向に手を振り抜いて、幾らかの靄を削り取って行ったが、さして問題は無い。

「むぅ」

巨人の足から血刃を回収したが、その量は最初の10分の1程。

殆どが不浄の力に汚染されて操作出来なくなってしまったらしい。

消費した魔力は3割程、残りは4割しか無い。

取り敢えず巨人は放置、リッチを殺(や)ろう。

黒い靄の中にある物は、手に取るように分かるのだ。

僕は即座にリッチの背後へ移動すると、死神の鎌を振り抜いた。

ーーガギィィンッ!!

大鎌の一撃は、リッチが張っていた強力な結界に阻まれる。

次の瞬間、

神速と言える速度で反応してみせたリッチが、カウンターで膨大な魔力が込められた杖を振るってきた。

その一撃は、余波だけで周辺一帯の闇を全て払い除け、宙空に暴風の嵐を引き起こす。

当たれば即死していただろう。

当たれば(・・・・)、ね。

「悪いね、予測済みだ」

「カカ……カ……」

リッチの背骨を破壊して、その奥にある魔石を握り締めていた剣の右手を引き抜く。

奪い取った魔石をインベントリにしまうと、リッチは骨をばらけさせ、死亡した。

それらも落下する前に回収しておく。

強い魔力を宿した骨。

様々な用途に使えそうである。

《レベルが上がりました》

僕も死神の時間を置き去りにしたかの様な高速移動には随分と苦労させられた物だ。

……実際にやって見て何だが、これは所謂(いわゆる)初見殺しと言う物だろう。

さて、リッチはこれで終了。

案外簡単に倒せた様に感じるが、その実此処までの消費魔力量は8割。

膨大な魔力に裏打ちされた怒涛の不意打ちラッシュを仕掛けた故に勝てただけである。

配下がいなくとも手札がかなり多いからね。

次は巨人だ。

インベントリから出したのは、金色の大きな杯。『禁忌の聖杯(フォビドゥングレイル)』。

これとマナシールリングから魔力を吸収し、最大まで回復する。

慣れかレベルが上がったからか吸収速度も上がり、魔法行使に必要な量の魔力を直ぐに回復出来る様になっていた。

続いて取り出すのは、迷宮探索で入手したアイテム、各種崩石や爆石などの爆発魔法アイテム。

死神のチョーカーの能力を発動し、聖属性を付与して巨人の胴体へ爆撃する。

落下する小さな玉は着弾と同時に爆発し、巨人の肉を削いで行く。

広い砂漠に轟く爆音。

月光にも負けずに舞い散る光の花。

光と音の乱舞は、巨人の巨大な核を大きく露出させて終わりを迎えた。

やはり巨大な生物の核は大きく、単純な魔力の保持容量も大きい。

良い素材になりそうだね。

影鎌を使い、核にこびり付いた肉片を聖と闇、影属性の鎌で削ぎ落とし、回収。

《レベルが上がりました》

重い音を立てて崩れ行く死体の山。

そのゴミ山も、自動回収が発動して回収してしまった。

取り敢えず腐肉と骨、呪砂、虫、の四つのファイルに分類し、不浄塊巨人と言うフォルダに入れておく。

……さて……。

全ての不浄を打ち払った事を確認して、改めて女王に向き直った時、それに気が付いた。

「……月が……」

空高くに輝く月が、

ーー金色に変わっている事に。