Alchemist Yuki's Strategy

Lesson 3 More Yuki

捜索隊は、王都南の森から霧の森一帯、王都の地下水路から地底湖まで捜索範囲を広げていたらしい。

全員が戻って来るまではおおよそ十数分掛かるだろう。

その間に、ある物を作った。

セツナ LV258

フユキ LV260

アワユキ LV253

フブキ LV255

物と言うより者だろう。

所謂、ホムンクルスと言う奴だ。

作り方は簡単。

通常の手順だと、材料は3つ。

上級のポーション。一滴の血液。ピンポン球くらいの大きさの魔石。

これを、人肌より少しだけ高い温度で温めながら即席生命(インスタントライフ)の魔法を掛け、100〜150日くらいで完成する。

成功率ーー

ーー驚異の1%以下。

その理由は明快で、この通常手順の欠点は山程ある。

先ず材料。

上級ポーションは、レシピを見た所品質が低い物しか作れない。

瞬時に回復する強力な再生作用が無いのだ。

血液は、そもそも単品でクローンを作れる様な代物では無い。

上級ポーションの再生作用とインスタントライフの生物を生成する能力で無理矢理クローンを作成している様だが、この場合最も適した物は血液よりも生殖細胞だ。

卵子と精子があればより簡単に人を作れるだろう。

……まぁ、その場合は最早ホムンクルスでは無いが。

ホムンクルスを作りたいのなら、細胞の量は多い方が良い。

大量の血液、又は、肉片がいるだろう。

続いてピンポン球くらいの大きさの魔石。

これは三つの材料の中でも一番成功率を下げている原因だ。

何せ、魔石の純度に付いての記述が無い。

大方、熊や猪の魔石でも使用したのだろう。

そんな事をすれば、ホムンクルスの核となる部分が異物其の物になってしまう。

最も適した核は、血液の提供者と同じ魔力を持つ魔結晶。或いは最低でも純粋な魔力の魔結晶が必要だ。

材料の問題点は山程あるが、次は手順の問題点。

第一の問題は、やはり上級ポーションにある。

そもそも、ポーションと言う物は劣化するのだ。

品質を維持する魔法が込められた瓶に詰めても、持って30日。

それを過ぎると急速に回復作用が劣化して行く。

研究資料では、最終的に上級ポーションを詰め替えると言う手法を用いた様だが、それをすると繁殖中の細胞に大きなダメージを与える事になる。

最低でも35日以内にホムンクルスを作成しなければならないのだ。

更に言うと、低品質の上級ポーションは不純物が多いのである。

続いて、人肌より高い温度を保つと言う記述。

これは単純な話で、ホムンクルスを生成するにあたって火は使用してはいけないのである。

そんな事をしては繁殖中の細胞が火の精霊の影響を大いに受ける事だろう。

精霊刻印(スティグマ)の原理と同じだ。

これが火の属性を持つ魔物のクローンを作る為ならあまり大きな問題では無いが、直火など以ての外である。

この問題は、記述によると魔力の流れを遮断する魔硝子で克服した様だが、僕から言わせて貰えれば……アホかと。

熱を遮断しない結界を張ればそれで問題無しなのに。

続いてインスタントライフ。

これは言わずもがなであろう。

生命を誕生させる究極の魔法と言われていた様だが、インスタントなライフなのだから寿命が短くなるのも当然と言える。

それが100日も持つ筈が無い。

仮にそれで成功したのだとしたら、材料や手順以外の問題が発生したのだと推測出来る。

例えばそう、場所や時、大いなる力の存在。

要約すると、地脈から魔力が吹き出る場所であったり、星の配列であったり、又は精霊や何かの手助けがあった場合だ。

正に、運が良かった。

奇跡と言い換えても良い。

最後に、日数に関する諸問題。

無視し得ない物は、上級ポーションの供給問題。

続いて、温度を一定に保つ為の燃料。

そして、不純物。

問題だらけの手法で成功した者がいるなら、それはきっと、なるべくしてそうなった運命なのだろう。

さて、改めて僕のやり方だが。

先ずは材料。

最高品質の上級ポーション。

僕の肉片、おおよそ15%。

高品質の魔結晶の粉。

カットして僕の魔力と同調させた生命の宝石(リ・バース・ジュエル)。

手順は、魔導抽出で不純物を取り除いた上級ポーションに材料を入れ、精霊を退かして熱を与え、生命創造(クリエイトライフ)。

結果、生命の宝石(リ・バース・ジュエル)が核となり、完璧なホムンクルスが完成したのである。

それぞれ、雪奈(セツナ)。冬鬼(フユキ)。淡雪(アワユキ)。吹雪(フブキ)。の4人。

性格は、セツナがスノーさん。フユキが侍風。アワユキがおどおどビクビクしている子で、フブキがクールで淡白な子。

容姿は、セツナがスノーさん。フユキは長髪で僕より身長が少し高めのツリ目。アワユキは逆にタレ目で髪は少し短め。フブキはショートヘアで男の子っぽい。

勿論、全員雌である。解せぬ。

装備は、セツナがメイド服に名も無き聖槍と毒鋼の短剣。フユキが唐紅の曼珠沙華と鬼面に雷鋼の刀。アワユキが不死賢王のローブに名も無き聖杖。フブキが朱獅子の魔霊装に朱獅子の剣と氷鋼の弩弓。

彼女等には適正なスキル結晶を与えてあるので、能力的には程々に使えるだろう。

そんな彼女等の派遣先だが、

セツナはスノーと名乗らせ王都に。

フユキはインヴェルノと名乗らせルベリオン王国南方に。

アワユキはプレイヤー達の調査と育成に。

そしてフブキは、ルステリア公爵が治める迷宮都市の調査に送り出す。

特にアワユキとフブキは力量がバレると調査になら無いので、一般的な冒険者が装備する様な低級の武具を持たせ、使える魔法を制限しての派遣となる。

これで、僕が王都にいながら別の場所を探索出来る様になったと言う訳だ。