Alchemist Yuki's Strategy
Episode 96 Organization Snowblack IV
色々と欲しい物が多過ぎる。
ざっと見た感じ、鉄級では開示されていない情報の方が多そうだった。
俺専用武器とやらも、俺専用だからこそ開示条件が緩く設定されていたようで、検索すると更に上の武器があるらしかった。
ハテナマークが沢山あって何がどう変わってるのかは分からないが、まぁ、凄いんだろう。
「ユーイチっ、見てください!」
「ん? んんー?」
エミリーに呼ばれて横を見ると、同じく景品や商品の目録を見ていたエミリーが、こちらに金属光沢のある小さな球体を見せて来ていた。
若干興奮気味にそれを握っているエミリーにほっこりしつつ、そんなもん景品にあっただろうかと思考を巡らす。
「これ、凄いんです!」
「うんうん、商品の方か?」
「はい! ほら、こんな風に……」
エミリーが手を掲げると、なんと金属の球が大きくなった。
それは大きくなりつつも形を変えーー
ーー包丁になった。
「柔鋼と言う金属で出来ているらしくって、登録された形状に変形するんです!」
興奮しているエミリーの手の中で、金属の塊はレードルになったりトングになったりターナーになったりと自由自在に変化した。
「おぉー、すげぇ……幾らしたんだ?」
「本来なら何百万もする所を、今回は試験運用も兼ねてと言う事で……1万MC(まなくれじっと)でお譲りして頂きました!」
「おぉー! すげぇ!」
99万以上安くなったって事か。
……これは……。
「……あー、クロギリさん?」
『試験が必要な物はあまり多くありません。その殆どは食材や化粧品、服飾類となっております』
下世話な思考が先読みされたぜ……。
うん。まぁ、そう旨い話は無いよなぁ。
◇
「おーい、ユーイチ!」
「お、ティアーネ。皆、目が覚めたのか」
売店区画を物色していると、小洒落たカフェの様な場所でティアーネに呼び止められた。
ティアーネは見た感じ特に後遺症みたいのも無さそうだし、疲労が残っている感じでは無い。
ともあれ、全員無事に目を覚ましたみたいで良かった。
「飯はちゃんと食えたか?」
「うむ。……あのかれぇらいすとやらは良いな! 見た目は泥だが実に美味かったぞ!」
「私、お酒類にはとても感動しましたわ。リベリオンの年間消費を考えると、品質が一定で美味しいスノーブラックと取り引きすべきだと思いますの。議会で取り上げるべき案件ですわ!」
「お、おう……朝から酒、いや何も言うまい……俺はまだ飲んで無いけど、そんなに良かったのか?」
「ええ、とっても!」
普段冷静で思慮深いエリザがそんなに執着するくらいだから、相当高品質だったんだろうな……まぁ、温いエールや洗練されて無いワインとは比べるのも可哀想だろうが。
「2人はどうだった?」
先程から若干下を向いて黙したままのリエとアケミに話を振る。
「……まぁ、凄く美味しかったし、懐かしかったかな」
「本当に。正直言って泣く程嬉しくて美味しかったです」
リエはフードを目深に被り、珍しく視線を逸らしてそう言った。
その後に続いたアケミも、妙に大きいサングラスを掛けている。
「……何か辛い事があるなら話せよ? 俺だって全部解決出来る訳じゃ無いけど……力になってやりたいって事くらいは思うから、さ」
不審な2人にそれだけは伝えておく。
何度も死に掛けた訳だが、やっぱりこう言う事で後悔はしたくない。
俺は多分、仲間が死ぬのが一番辛いから。
そう言うと、2人は困った様に眉根を寄せた。
「って言うか、バツが悪いと言うか……恥ずかしいと言うか」
「私はまだマシですが、リエさんは……いえ、こう言うと獣人の皆さんに悪いとは思うんですけど……」
「?」
酷い後遺症で体が怠い。と言う訳では無さそうだが……獣人? どう言う事だ?
「……笑わないでよ?」
「私の方は気を強く持ってくださいとしか……」
そう言って、2人はフードとサングラスを取った。
「え?」
「……何だ……それ……」
リエは頭部から白い狼の耳が生えて一部の髪が白く染まり、アケミは両目に緑と黒の幾何学模様が現れていた。
「……どう、え? ……何それ……?」
多分今日一番動揺した。