Alchemist Yuki's Strategy

Episode 96 Organization Snowblack IV

色々と欲しい物が多過ぎる。

ざっと見た感じ、鉄級では開示されていない情報の方が多そうだった。

俺専用武器とやらも、俺専用だからこそ開示条件が緩く設定されていたようで、検索すると更に上の武器があるらしかった。

ハテナマークが沢山あって何がどう変わってるのかは分からないが、まぁ、凄いんだろう。

「ユーイチっ、見てください!」

「ん? んんー?」

エミリーに呼ばれて横を見ると、同じく景品や商品の目録を見ていたエミリーが、こちらに金属光沢のある小さな球体を見せて来ていた。

若干興奮気味にそれを握っているエミリーにほっこりしつつ、そんなもん景品にあっただろうかと思考を巡らす。

「これ、凄いんです!」

「うんうん、商品の方か?」

「はい! ほら、こんな風に……」

エミリーが手を掲げると、なんと金属の球が大きくなった。

それは大きくなりつつも形を変えーー

ーー包丁になった。

「柔鋼と言う金属で出来ているらしくって、登録された形状に変形するんです!」

興奮しているエミリーの手の中で、金属の塊はレードルになったりトングになったりターナーになったりと自由自在に変化した。

「おぉー、すげぇ……幾らしたんだ?」

「本来なら何百万もする所を、今回は試験運用も兼ねてと言う事で……1万MC(まなくれじっと)でお譲りして頂きました!」

「おぉー! すげぇ!」

99万以上安くなったって事か。

……これは……。

「……あー、クロギリさん?」

『試験が必要な物はあまり多くありません。その殆どは食材や化粧品、服飾類となっております』

下世話な思考が先読みされたぜ……。

うん。まぁ、そう旨い話は無いよなぁ。

「おーい、ユーイチ!」

「お、ティアーネ。皆、目が覚めたのか」

売店区画を物色していると、小洒落たカフェの様な場所でティアーネに呼び止められた。

ティアーネは見た感じ特に後遺症みたいのも無さそうだし、疲労が残っている感じでは無い。

ともあれ、全員無事に目を覚ましたみたいで良かった。

「飯はちゃんと食えたか?」

「うむ。……あのかれぇらいすとやらは良いな! 見た目は泥だが実に美味かったぞ!」

「私、お酒類にはとても感動しましたわ。リベリオンの年間消費を考えると、品質が一定で美味しいスノーブラックと取り引きすべきだと思いますの。議会で取り上げるべき案件ですわ!」

「お、おう……朝から酒、いや何も言うまい……俺はまだ飲んで無いけど、そんなに良かったのか?」

「ええ、とっても!」

普段冷静で思慮深いエリザがそんなに執着するくらいだから、相当高品質だったんだろうな……まぁ、温いエールや洗練されて無いワインとは比べるのも可哀想だろうが。

「2人はどうだった?」

先程から若干下を向いて黙したままのリエとアケミに話を振る。

「……まぁ、凄く美味しかったし、懐かしかったかな」

「本当に。正直言って泣く程嬉しくて美味しかったです」

リエはフードを目深に被り、珍しく視線を逸らしてそう言った。

その後に続いたアケミも、妙に大きいサングラスを掛けている。

「……何か辛い事があるなら話せよ? 俺だって全部解決出来る訳じゃ無いけど……力になってやりたいって事くらいは思うから、さ」

不審な2人にそれだけは伝えておく。

何度も死に掛けた訳だが、やっぱりこう言う事で後悔はしたくない。

俺は多分、仲間が死ぬのが一番辛いから。

そう言うと、2人は困った様に眉根を寄せた。

「って言うか、バツが悪いと言うか……恥ずかしいと言うか」

「私はまだマシですが、リエさんは……いえ、こう言うと獣人の皆さんに悪いとは思うんですけど……」

「?」

酷い後遺症で体が怠い。と言う訳では無さそうだが……獣人? どう言う事だ?

「……笑わないでよ?」

「私の方は気を強く持ってくださいとしか……」

そう言って、2人はフードとサングラスを取った。

「え?」

「……何だ……それ……」

リエは頭部から白い狼の耳が生えて一部の髪が白く染まり、アケミは両目に緑と黒の幾何学模様が現れていた。

「……どう、え? ……何それ……?」

多分今日一番動揺した。