Alchemist Yuki's Strategy

Episode 107: Talk

《【大陸(コンティネント)クエスト】『風巫覡』をクリアしました》

【大陸(コンティネント)クエスト】

『風巫覡』

参加条件

・風精王の巫覡を保護する

達成条件

・風精王の巫覡を保護する

失敗条件

・風精王を滅っされる

達成報酬

参加者報酬

・スキルポイント1P

・道具『遊楽の神子結晶(プレイヤーズジェネレイドチップ)』

参加者貢献度ランダム報酬

貢献度100%

・道具『風の晶珠(ウィンドジュエル)』

・道具『風の欠片(ウィンドフラグメント)』×10

・道具『風の純結晶(ウィンドトゥルークリスタル)』×100

メナーニャ・デーゼハルクは、PTSDを発症していた。

どうやら今生の親兄弟を手にかけた事が大きなトラウマになっている様で、持ち味である風の力を十全に扱えなくなっていたのだ。

両親の首を落とす時の記憶が特に曖昧で、一方は慈しむ様に微笑み、お前だけでも生き延びろと言われた記憶。もう一方は憎しみと恨みの篭った視線を向けられ首を落とす記憶。

帝国の襲撃前の記憶から見て、王と王妃の反応は十中八九前者が正しいだろう。

メナーニャ・デーゼハルクには懇切丁寧に一部補完した(・・・・・・)記憶を追体験させ、まるで事実かの様に他人の心を語り、私に従う事が贖罪に繋がると思わせて、しっかり洗、お話しした上で配下に加えた。

本人が元々強い人なので、帝国を討つ事こそ我が人生の大願と言う程帝国へ恨みつらみを募らせている訳では無いし、どちらかと言うと自罰的思考の方が強い。

こう言う子はちょっと強めに叱ったり、そうかと思えば優しくしたりして、大きな器で包み込む様にしてみせるとコロッと落ちる。

元気な時にしっかり叱り、疲れてる時に優しく包み込むと、犬が尻尾を振る様に懐いてくるのである。

身内だとリナやチサトが近いだろうか?

まぁ、大きな物に引き寄せられるのはこの世の理(ことわり)。多少チョロくても私相手なら仕方の無い話である。

そんな訳で、メナに限って言えば私が悪虐の化身であったとしてもそれは何かの間違いだと死んでも思い続ける事だろう。

件のメナは、どうやら負の化身と相対する勢力に何かしら深い関わりがある存在らしい。

魔眼の性質やクエストの条件と名前から考えるに、風の精霊王が負の化身に狙われる立ち位置にいる様だ。

魔眼の性質からメナを使う事で風の精霊王がいる場所を探知出来そうでもある。

疑問なのは、帝国にいる筈の負の化身がメナを利用しなかった事。

状況次第では、負の化身に対する大きなアドバンテージとなり得るかもしれない。

結構な消耗を強いられたメナとのお話しを終え、次に見たのはメナの部下達だ。

『風の乙女』なる騎士団に所属しており、小国とは言え一国の王女である所のメナが、お金を惜しまず育てた騎士団は精強の一言。

年齢幅は13〜20歳でレベル帯は20〜30と熟練兵士に匹敵する程。

全員が全員風魔法を習得しているのは、おそらくハルク公国自体が風精に気に入られている土地にあったのだろう。

そんな魔法剣士が30人もいるのだ。

更に、『風の乙女』の下部組織と思わしき『風の少女』と言う見習い騎士の集団もいた。

此方は6〜12歳と若い子供達ばかりで、人数は50人。此方も多少の魔法が使える魔法戦士だ。

彼女等がバラバラに運用されなかった理由は、全員集めて使えば、大した触媒も無しに大規模攻撃魔法を行使出来るかららしい。

まぁ、上手くやれば成竜をも一撃で仕留められるかも知れない戦力をバラバラに扱うのは勿体ないからね。

次、バーチス・アルディ……と言いたい所だが、彼には逃げられてしまった。

おそらく合成獣を作った人物本人なのだろうが、お馬鹿な白夜が高笑いしているうちに一目散に逃げ出してしまっていたのだ。

その危機察知能力は流石はレベル100に迫る猛者と言った所か。

少なくとも4万人程を一瞬で仕留める力がある事を帝国に知られたのは間違いない。

次攻めてくるとしたらそれ相応の大戦力がやって来るだろう。

次は普通に捕まったゼナードこと有村大智君。

彼はクズだった。

ただし、まだ幾らでも矯正出来る程度の。

彼は所謂生意気なガキである。

前世は9歳で痛みも無く爆死し、今世は2歳になる前に転生者として帝国に召し上げられた。

帝国では強力な異能持ちとして囃し立てられ、貧民から搾り取られた富を浴びる様に甘受して育った様である。

そんな生ガキな彼の記憶からは、色々と帝国の内部情報を得る事が出来た。

先ず彼の肩書きは、帝国十騎士とか十傑とか言う帝国最上位級戦力の一角。

二つ名は『強制支配のゼナード』。

その特徴は名前の通りーー強制支配。

彼の部下は殆どが彼の隷属下にあり、強力な魔物の魔石を用いる事で自分よりも強い相手を従える事が出来るらしい。

凡百なクズ魔石でも並大抵の人間を従える事は出来る様で、帝国は彼の作る隷属の首輪を使って人や魔物を問わず膨大な戦力を得るに至った。

つまりゼナード君はーー

ーー帝国飛躍の要因だ。

彼は各地の小さな迷宮からダンジョンボスを連れ出し、10体のレベル100級魔物を使役している。

正直言って、ダンジョンの魔物を、それも手厚く魂を保護されている筈のダンジョンボスを隷属させるなんて、相当な支配力が無いと出来ない所業だ。

その分野に限って言えば私にも匹敵するだろう。

しかし、流石にレベル100級の魔物をずっと自由に出来る訳ではない様で、10日に一度くらいは魔石の使役術式を書き直さないと行けないらしい。

そうしないと徐々に言う事を聞かなくなり、最後は襲い掛かってくるんだとか。

現在私の手元にいるボスは3体で、後の7体の内1体がメナにブチ殺され、6体がエルデホート港公国を襲っているらしい。

まぁ、6体くらいなら完全装備済みのリベリオンメンバーだけで十分対処可能だろう。