Alchemist Yuki's Strategy

Episode 166: Immortal Control

《【大陸(コンティネント)クエスト】『眠れる邪神竜の使徒:邪神竜の断片』をクリアしました》

【大陸(コンティネント)クエスト】

『眠れる邪神竜の使徒:邪神竜の断片』

参加条件

・ボス『邪神竜の断片』と戦う

達成条件

・ボス『邪神竜の断片』を討伐する

失敗条件

・大陸が滅びる

達成報酬

参加者報酬

・スキルポイント10P

・道具『遊楽の神子剥片(プレイヤーズジェネレイドピース)』

エクストラ評価報酬

圧倒粉砕

加速する運命

・スキルポイント5P

・道具『遊楽の神子結晶(プレイヤーズジェネレイドチップ)』×5

・スキル『遊技神の加護I』

嵐、又は津波と形容するのが相応しい猛攻により、邪神の断片は碌な抵抗も出来ず消滅した。

一番邪神の断片を削ったのは、グリドアだ。

変質したニグレド肉片を用いて、負の化身たる邪神の断片と正面から殴り合っていた。

まぁそもそもニグレド肉片は神の肉体の劣化品なので、然もありなんと言った所。

グリドアの手に渡る前は、錬金術で出る素材の搾りかすを捨てる廃棄場になっていた他、迷宮の魔力もモリモリ吸わせていたので、 質量が凄まじい事になっていた。

それこそ、地平の彼方まで広がるクランゼル大平原が生肉で埋まるくらい多い。

消化しやすい錬金廃材や魔力だったのが良かったのだろう。

ただし、一個の質量はあまり多く保持出来なかった様で、見上げる程の巨体になった所で分裂していた。

まぁ、実際は小型化出来るので、手乗りサイズの生肉がうぞうぞ蠢いている感じだったが。

闇の化身たるグリドアに触れた瞬間、その生肉達は闇そのものに変質し、全ての質量が最初の2個体に収束された。

そんなニグレド肉片による質量攻撃は、負の化身に最も効く攻撃方法であった。

ぶつかり合えば両者の質量がごっそり減るが、お互いに密度が尋常では無いので、側から見れば多少磨り減ったくらいにしか分からない。

ちびっ子達からしてみれば、なんか1人だけ凄いぶつかり合ってるのがいる! と言った感じだろう。

ともあれ、グリドアの、もといニグレド肉片の活躍により、邪神の断片はみるみる内に弱体化していき、間も無く完全消滅するに至ったのである。

「それじゃあ次の戦場に向かうけど……ちびっ子達は今日はもう休んでね」

「はーい!」

邪神の断片が居なくなって尚青褪めた表情を浮かべるちびっ子4人を代表して、うーたんの元気な声が響いた。

うーたんは大丈夫そうだが、他の子を連れ回すのは酷だろう。

黒霧の端末1人にちびっ子達を預け、次の獲物の元へ向かった。

「……君の武威に敬意を払い、僕の出せる全力で、君を倒そう」

「くっ……」

戦場では、既に戦いが始まっていた。

成る程確かに、仙人が2人もいれば戦力的には十分だろう。

昼食を待つ必要は無いのだ。

森の中では各地で炎が燃え上がり、あちこちで怒声や剣戟の音が鳴り響いている。

そんな森の一際開けた野営跡地で、最もレベルが高い転生者(フォーリナー)と槍仙の戦いが終わりを迎えようとしていた。

方や、僅かに煤が付いただけの槍仙、方や膝や肩に矢を受け、苦悶の表情で座り込む赤い髪の少女。

槍仙は少女に得物の穂先を向けーー

「我、一筋の光となりて天を貫かん。……奥義『閃』」

ーー放たれた。

それは正に閃光。

研ぎ澄まされた突属性の一撃は、真っ直ぐ少女の心臓へ迫りーー

ーー私の指先で停止した。

「っ!?」

「……は?」

流石にレベルも技量も私の方が上なので、普通に戦っても勝てる。

マハーカ君は慌てず騒がず槍を引いて離脱しようとしたので、穂先を指で挟んで逃がさない。

険しい表情の彼は、武人故に気付いてしまったのだろう。

自分に反動が一切来ていない事を。そしてそれが何を表しているのかを。

「はじめまして、マハーカ・クラージュ」

死角から飛来した闘気纏う矢を槍同様指で挟んで受け止める。

「私の名前は鈴ノ宮 真白。もうじき他は制圧するから、無駄な抵抗は止めて投降してね」

私の尊大な物言いに対し、マハーカは鋭い目付きで血を吐く様に言葉を紡いだ。

「……ビアジーヌをやったのはお前か?」

「そうだと言ったら?」

「殺ーー」

マハーカが憎悪の言葉を吐き、牙を剥こうかと言う正にその瞬間ーー

「ーーおーい、こっち終わったぞ!」

そんな声と同時に茂みからアニスが顔を出した。

「……あ、にす……?」

目を見開いて止まったマハーカを尻目に、森からビアジーヌも出て来た。

「弟子ってもそんな強くなかったなぁ」

「ビアジーヌ、生きてーー」

「ーーカーニャも捕まえたわ!」

「……邪神の後では、歯応えが無い、な」

「いやー、金属の体って便利だわー」

「刺されても痛くないしね」

森の中から続々と出て来る賢者の弟子達。

中でもナーヤは、ハーフエルフと思わしき弓を持つ少女、カーナシア・フィエルテの両手を拘束しつつやって来た。

「……で、マハーカ君。どうする?」

槍から指を離してそう聞くと、彼は得物を手放し両手を掲げ。

「……投降する」

渇いた晴天の空に、槍の転がる音が響き渡った。