Alchemist Yuki's Strategy

Episode 30 Yuki Worker

続いて、黒森館の鍵。

これは館の支配権と同義である。

貰える館は今は無き人形姫の館の奥にあった黒い森の館と同じ作りの館であり、有り体に言えば土地と資材を貰った感じだ。

工房と倉庫には幾らかの木材と石材、金属、そして……多種多様な髪の毛があった。

まぁ、貰える物は貰っておけと御先祖様が言ってるので貰うが……髪の毛は多種多様な見た目の癖して品質は一定であり、また量が摘めるくらいしか無いので、所謂コレクション的な物を見せられているのだろう。

同じく、品質が一定の人形が大量、無数に置かれた人形部屋があったので、形代神のコレクションを自慢されているのだろう。

……折角だから人形博物館的な物を作って展示してあげよう。

続いて三姉妹人形。

此方は、僕の髪の毛の余りを用いて形代神が作った小さな人形だ。

人形の神が作った人形と言うだけあり、その器は計り知れない。星珠くらいはあるだろう。

この人形達は、僕が特別に手を加えなくとも、勝手に何かしらの力を得て動き出すだろう。

おそらく端材でちょこちょこっと作ったのだろうが、それにしても紛う事なき神器の一種であった。

最後、形代金。

これは、形代神の神性を込められた金属。即ち形代神属性の神霊金属である。

軽自動車くらいあるが……それしか無いとも言える。

何せ形代神じゃないと作れない神霊金属だ。形代神に会いに行ける様にならないと手に入らない訳である。

現状パッと思い付く最良の使い道は……ミラードールのコア部分の形成に使ってコピー能力を強化するとか、むしろ全身形代金のドールを作って核に人形の宝珠か星珠を埋め込み、可能な限り完コピ出来るゴーレムを作るか。

……後は、神具としての形代の概念を利用して、神気を使った強化装置を作るとか?

形代金は他の神霊金属よりも幾らか強力な様なので、形代の概念に拘らない使い道ならそれこそ幾らでもある。

流石は現役の神が直々に作った神霊金属と言えよう。

以上が、今回の人形迷宮攻略における報酬だ。

良い物からいらない物まで多種多様に手に入り、配下の育成でもまぁまぁ良い結果となった。

幾つか追加されたタスクの1つは、各都市に博物館等のアトラクション施設を作る事。

こう言った追加要素に備えて都市には幾らか空き地が用意されているので、パパッと建設してしまおう。

施設は各都市の特色に合わせるとして……火の都市には、ルベリオン王国の宝物庫やかつてのベルツ大陸から掻き集めた魔剣聖剣等のレプリカを置いた『武装館』。

水の都市には……適当に水棲生物を置いた『水族館』。

風の都市には適当に動物を置いた『動物園』。

土の都市には適当に植物を置いた『植物園』。

闇の都市には、例によって大量に集められた呪具を中心に魔道具等も置く『呪物館』。

光の都市には、大量に貰った魔法絵画や人形、誰ぞが作った石像と絵画等を展示する『美術館』。

それぞれには入館入園のメリットが必要である。

差し当たって思い付くのは、入館入園を割と高めの値段設定にして、買わせたチケットにスタンプラリー的な要素を追加して館内園内をご堪能頂き、お土産屋等でスタンプの数によってグレードが上がる特別なお土産を買える様にする。とか?

『武装館』は勿論武具だとして、『水族館』や『動物園』は魔物召喚板(モンスターカード)。『植物園』は……魔物召喚板(モンスターカード)と……種とか? 『呪物館』は適当な魔道具で良いだろう。『美術館』は……スタンプを消費して絵画に挑める様にするのをメインにしつつ、ミスリードでお土産を良い物にするのが良いだろう。

中でも呪具の類いは沢山の人や物の歴史が詰まっているので、ただ見て回るだけでも良い経験になる筈。お土産屋で買える魔道具類は、美術館のそれと同じく特別良い物にしよう。

まぁ、どこも僕がプロデュースする以上、払ったお金以上に良い物しか用意しないけどね。

……それに、スタンプの使用方法が判明するまでの間は丸儲け期間だしね。全部押してあったら粗品を用意するとかでミスリードしよう。

おやつの時間にはまだ早いので、時間を潰す意味でも現状の確認を行なっておく。

先ずはマレビト招致関連。

万事OK。

蝶と鬼の二柱にお菓子と酒の山を捧げる事となったが、十分な安全マージンを確保していたので、マレビト招致には余裕で間に合う。

都市には幾らか空き地があるが、それは追々何かしらの施設を設置したり、場合によってはマレビト、プレイヤーに貸したりするとして、クエストの設置も問題なし。

扱う品々は現状では僕の独占市場ばかりなので、値段設定は利便性や希少価値等を考慮してやや強気で行く。

食糧生産はおよそ15万の人材を養うのに十分な自給率を維持出来るし、現在は実際に都市に住んで貰っての最終確認中だ。

次、配下達の攻略、訓練状況。

ウルル達等の強力な配下は、変わらず高位迷宮での狩りを続けている。

多くはレベル限界に到達してしまったのでテコ入れが必要だが、一部は元々才能があったり、ボスとの単独戦闘で幾らかレベル限界が上がっていたりする。

レベル限界の子達には経験値が分配されないので、レベルが上がったのに関わらず比較的レベルアップスピードが上がって来ている為、多少レベル限界が高くとも直ぐに頭打ちになってしまう。

それ故になるべく早めにテコ入れしたい所である。

傭兵達は、経験値を分配せず、主にスキルアップの訓練をのんびりやらせている。

英雄達は有望株には経験値を分配しているので、独自に進化したりしているが、そうでない者にはインスタント迷宮の攻略をやらせている。

種類が色々増えているとの報告を受けているが……時間あたりの獲得リソースはイマイチだ。

傭兵に関しては、こんな感じで適当かつのんびり運営して行こう。

西の迷宮の元ゴブリン達やチェス兵達は、どちらも順調に修行中で増殖中。

元ゴブリン達は経験値分配ではなく大気中の魔力濃度を増し増しにした状態での成長実験をしているので、レベルアップ速度は遅い。

とは言え、戦力的にはもう十分に一国を落とせる程なので、場合によっては兵士として使用しても良いだろう。

チェス兵達は、無限生産による増殖の他に……上層に設置された鉱脈へ合体して遠征し、鉄を掘り出して繁殖していた。

大きく拡張していたのでまだまだ増えても問題無いが、金属の供給があれば鼠算式に増殖する様なので、鉱脈の設置と更なる拡張を行なってみよう。

続いて爺様達の現在の状況。

先ず爺様は、ザイエと一緒に何処かに消えたり戻って来て本をどうにかしたり王宮に行ったりしている。

ザイエは、何処かに行ったきり帰って無い。

シスターアルメリアは、従士爵のレリアと一緒に子供達の教育を幾らかしているが、もう間も無く合流出来そう。

子供達の護衛として付いて来た幾らかの若い冒険者は、僕の屋敷に滞在しつつ、王都のギルド本部を通してリスティアで資源回収に励んでいる様だ。

現在ギルドのグランドマスターは、ネージュことアワユキとスノーことセツナと交渉しており、近日中には王都のギルドが支配下に降る。筈だ。

プレイヤーの動向は、大剣士と拳姫の合同チームが火竜を討った後、プレイヤー集団は主にリスティアや鍛錬島でバラバラに攻略を行っている。

一部王都周辺を探索している者達もいるが……大した戦果は上がっていない様だ。

目下僕の支配下に無く、近くにいそうな強者は……ウルルっぽい巨大狼。元β島の巨大ゴーレム。流星山脈の龍。禅鬼。空華。

敵対勢力は、吸血鬼とその王ヴァンディワル。天使とそれを率いている筈の熾天使。悪魔と魔王使い(ディアリード)。

さて……やる事多いなぁ。