Alchemist Yuki's Strategy

gossip ravipur wich maica awakening

神代化処理(エインヘリヤライズ)の手術予定に従い、マイカの部屋を訪れると、ピンクのちびっ子マイカちゃんが、ノリノリで踊っていた。

「ラッビュ、ラッビ、ラッヴ〜ラヴィピュア♪ 恋する〜ハートの〜——」

「……」

「——魔法を…………ぴぎゃぁ!?」

僕に気付いたマイカは、ピシッと固まった後布団にダイブした。

「満足するまでどうぞ?」

「いーやー! 見られたー!」

何故かジタバタ暴れと布団に潜り込むマイカ。

普段からあぁなのに何で恥ずかしがるのか。

「違うの〜! いつものマイカと今のマイカは違うの〜!」

「成る程、スキルの形状がそうなっているのか」

「え!? そうなの!?」

何で言った本人が分からないのか。いやまぁ、それが凡人の特権だ。知らなければこそ出来る事もある。

「と言う訳でマイカ、手術を始めるよ?」

「しゅ、しゅじゅちゅ……?」

手術だよ。

さて、マイカの能力だが、元々持っている力は、ラヴィピュア・ウィッチなる女児向けアニメの主人公、マイカの使う不可思議な魔法を再現した物だ。

執着の原因は、やはり名前が同じだったからだろう。

使える力は、割と強力な身体強化。それから謎のピンク色のビーム攻撃。そして何より、謎の衣装チェンジ。

それぞれ、身体強化はレベル1時点でレベル30程度の力を発揮できる割と強力な物で、幾度の戦いを得た現時点では、魔力量の増大に伴いその強度も高まり、やろうとすればレベル1時点でレベル80クラスの力を発揮出来る代物となっていた。

勿論その代償は大きいが、敵を倒したり逃げたりするのに使える切り札があれば生存力は飛躍的に高まるからね。

ビームの方は、どうやら僕の知らない特殊な性質の魔力を含んでいるらしい。

量が微量過ぎてどうにも察知し得ないが、能力としては単純な魔力攻撃だ。

そして、問題なのが、最後の衣装チェンジだ。

これは簡単に言えば、心器召喚のスキルだ。

よく確認すれば、その強度が低過ぎるくらい低い事は良く分かるが、間違いなく低レベルの心器召喚スキルだと分かる。

後はまぁ、なんとなく演技系のスキルが働き、役にのめり込む様な形で人格が変わるくらいだ。

それにしたって、元が良い子だからか対して変わってない。

総評としては、ユニークスキルの中でも殊更にユニークなスキルと言えよう。

さて、そんな特殊なスキルをマイカと話し合い、改善した結果……更に不可思議なスキルになった。

先ずは問題の心器召喚、自称変身能力だが、身体強化と合わせて、3段階の強化コスチュームを作成出来る様にした。

第一段階が、髪飾りと謎のハートステッキだけが出る、身体強化。

第二段階が、完全に変身する、大きな代償を伴わない程度の限界まで強化する身体強化。つまり通常変身モード。

そして最後が、若干派手で強そうな見た目に変わる、限界突破(リミットブレイク)。

特に安全装置(セーフティー)はつけてないが、使い過ぎたら自前の安全装置(セーフティー)が作動して失神する筈なので問題ない。

ここに闘気法を加えれる様になれば、十分な強さを発揮出来る。

更に、ビームも魔改造し、段階的に強化される様にした小ビームと、溜めた大ビーム、そして必殺ビームを放てる様にした。

必殺ビームに関しては、限界突破(リミットブレイク)同様マイカの切り札であり、連発は現状不可能だ。

また、それ以外の幾らかの固有技も追加した。

ここまでは、強化の基本方針として意見を聞きつつ誰にでもやってる事だ。

此処から先が不可思議の領域である。

先ず、マイカのスキルから因子を回収、培養し、大した力の無い謎生物を作ってその魂魄にマイカ因子を注入、安定化させた。

然る後、マイカの魂魄と接続。同調させ、お互いの魂魄の保護を行った。

謎生物は、二頭身のぬいぐるみみたいな生物だ。

敢えて何に近いかを挙げるなら……ライオン? マイカの変身能力と同調して、ライオンっぽい生物に変身出来る様にしておいた。

名前はソレオンと言うらしい。何でも、夢の国の騎士なんだとか。

まぁ、一応飛行能力があって偵察とかに使えるので、無意味ではない。

続いて、マイカたっての希望で、マイカの魂魄にマイカと似た様なスキルを発芽させる種を4つ仕込んだ。

カラーリングとしては、青、緑、黄、橙の4色で、基本的な成長方針がある程度定まっている特異なスキルだ。

これはマイカと対象の同意を得る事で、任意の対象に植え付ける事が可能であり、植えると同時に発芽して、栄養を吸収し成長する。

両者の合意を得る事で、切り離す事も可能な、加護型のスキルと言える。

また、マイカのたっての希望で、それぞれのスキル所持者が様々な合体技を放てる様にしたり等、幾らかの特殊な強化機構を追加した。

現状1人では何の意味も無い機構である。

もぞもぞと布団を被り、マイカは申し訳なそうに呟いた。

「……その、ゴメンね。色々と付き合わせちゃって……変、だよね……」

どうやら、魂の対話の折、若干暴走してた事を恥じている様だ。

だがまぁ、通常より消耗したとは言え、大した手間でもないので問題ない。

「君の選択だしね、好きにすると良いよ。僕はそれをちょっと手助けするだけだし」

「っ!? …………」

まぁ、それに、変なのなんて幾らでもいる。

マイカのは特別変だが、それぞれのパーツは他のユニークスキルと類似する点も多い。

変に見えるだけで、細かいところは他と変わらないのだ。

「まぁ、マイカはマイカらしくやって行けば良いんじゃない? 僕も好きでやってるだけだし」

他者の強化は言わば僕の強化の為の実験でもあり本番でもある訳で、マイカがどうこう考えるまでも無く強化はなされていたのだし、手間が増えようがどうしようが何の問題も無い。

そこまで言い終えた所で、何故かマイカが飛び付いて来た。

「ふぇぇーーんっ! ゆずきぃーっ!!」

「ユキだけど」

何だと言うのか。

後日分かった事だが。

ラヴィピュアの青、主人公の親友であるユズキと言うキャラクターのセリフに、『マイカの選択だものマイカの自由にすると良いわ。私はそれを、私の選択で助けるだけよ』とか、『マイカはマイカらしくいれば良いの。私は好きで一緒にいるんだから』とか言うのがあったらしい。

意味が微妙に違う。