Alchemist Yuki's Strategy

Episode 13: Nico Nicola, Punnyutan

ログインして、鍛錬島の屋敷で目を覚ます。

アナザーをやると言っても、新しい事を始める訳では無い。

流石の僕でも、消耗著しい現状で、何かを開発したりする余裕は無い。

では何をやるのかと言うと……セイト達の動向把握にちびっ子組の確認、リアム達の状況確認、他色々だ。

先ずは、プチニコラとの交流。

インベントリから至福の星珠(フォルトゥーナ・スフィア)を取り出す。

間も無くして、ぽんっとプチニコラが現れた。

取り敢えず撫でる。

『んふー☆ ユキちゃんはイイコだねー。ごめんねープレゼント無いのー』

「プチニコラがあるから良いよ」

『んふふもうー、そんな事言ってー』

手に擦り寄って来るニコラを撫でる。

さぁ、吐いて貰おうか。

「ところでニコラ」

『な〜に〜?』

「今のニコラは星霊なの?」

ベルツェリーアならあががとなっている所だが、ニコラはふにゃふにゃしながら応えた。

『んんー、厳密にはちょっと違うんだけどねー? 似た様な物? 普通の星霊は活性化している星の信仰が結集して生まれるらしいよー』

「ふむ……それって『原典保持者(エピック・アクター)』も同じなんじゃない?」

『原典(エピック)』は世界の大気中を漂う信仰を集めて作られるらしいし。

『うんうん☆ 同じ様な物だねぇ。……敢えて選別するなら、作為的に信仰を集めて作られる星霊が『原典(エピック)』。主に一つの属性を持つ魔力性質が固まって作られるのが『星珠(スフィア)』。星そのものに存在する無数の神性が掻き集められて生まれるのが『星霊』……って感じぃ?』

「ふむふむ」

となると……一応キッドや今のベルッェリーアも星霊の一種なのは間違いないのか。ふむ……。

「じゃあ、星珠(スフィア)と星の違いは?」

『そんなの簡単だよー☆ 星は星。星珠(スフィア)は星の最小単位を維持できる程の、凄くいっぱい魔力を含んだ魔力結晶……を、誰でも使える様に改造した物の事だね』

ふむ、あくまでも維持(・・)、か。

改造しまくった都市を維持するのに星珠(スフィア)の演算力を結構使用してるが、無改造で環境を整えるだけならそんな物なのだろう。

一人納得していると、僕の手の中でプチニコラが電球を灯した。

『あ、あとね、明珠持ってるでしょ? アレを対応する宝珠(オーブ)に使うとー?』

「使うと?」

『んふー☆ 何か起きます!』

何か起きるのか。まぁ、何となく予想は付いている。

僕は入手した6つの宝珠(オーブ)と明珠を取り出した。

それぞれをそれぞれにくっ付けると、辺りを光が包み込む。

そして——

『ふふん、ようやくわたしの出番ね!』

『ユキちゃんユキちゃん、わたくしですわー!』

『余が力を貸すんだから首を落とさせなさい!』

『わたしも叩きたいですー』

『はぁ、まったく……世話を掛けるよ』

『……ん、よろしく』

スートの王達とベルベルとリヨンが現れた。

ニコラと同じプチサイズだが、心強い味方だ。取り敢えず撫でておこう。

「よろしくねー」

見た所、宝珠(オーブ)のエネルギー増加量は結構な物だが、星珠(スフィア)程ではない。

とは言え、ただの宝珠(オーブ)の状態で、これ程までの英傑のバックアップがあるなら願ったり叶ったりだ。

取り敢えずリヨンガラスを用いて兵士を配備し、ハートとクラブは相性の良い子しか受け付けないだろうからちょっと運用を考え、ベルベルとスペードとダイヤは誰でも運用出来そうだから性質の見合った子に渡そう。

全ては皆が回復してからと言う事で、次はちびっ子組の確認。

現在ちびっ子組は学校で授業を受けている。

前日のサンプルで大きな問題がない事の確認が取れたので、今日から各都市の子供達が別クラスと言う形で入って来ている。

明日からは大人の教育も始める予定だ。

差し当たって、気配を絶ち、バレない様に授業の様子を見る。

今は、算術の授業だ。

勿論全員が参加しているが、基本的には実力が付けば良いので、テストで一定以上の点数を維持出来るのなら授業には参加しなくとも良い。

初期段階で最低限の基本を叩き込んだ後は、選択授業で好きな分野を学んで貰う予定である。

まぁ、基本の授業は何処まで行っても記憶の反芻と利用なので、赤点になる事は無いだろう。

今も、順番毎に呼ばれる子達が元気良く答えている。

最低限必要な教育を仕込んだ後は、多方面に及ぶバックアップを行い、各学徒、各学問毎の教導とその先への援助を与える。

要は、基本を叩き込み、専門を教導し、自立を支援すると言う、極当たり前の体制である。

件の基本には国民皆兵の例によって、最低限の体術、魔力操作を盛り込んでおり、基本教育を受講し切った時点で、おおよそレベル20〜30程度の実力を有するのが理想だ。

まぁ……各武力に関しては、それぞれ前提となる知識や心構えが必要な事もあり、子供どころか大人からもその多様性を奪い兼ねないので……今後の我が国の発展次第では、専門教育の領分にする事も考えておこう。

……何より、魂の成長にはその分のエネルギーが必要で、その供給を考えると……全員を平均的に鍛えるより何名かを特化させて鍛える方が良いからだ。

少なくとも、僕らの敵となる存在と戦う場合、100万人のレベル20より、たった1人のレベル700の方が、他全員の生存率を上げられる筈だ。

取り敢えず、机に突っ伏して寝ているしゅーたんを揺り起こし、僕に気付いたうーたんにしっかり授業を受ける様に促しつつ、頬をぷにぷにしまくってからその場を後にした。