Alchemist Yuki's Strategy
Episode 21: Being Born Down Is The Queen Of Demons
覇王の証(マキシマム・チャンピオン)をレーベに渡し、ラスト・エンゲージは相思相愛でないと発動しないので適当にクラディ&ゼーレに渡した。
施設系である水鏡殿は、改築中の涅槃都市に設置、約束の花園はリェニに、黒薔薇の塔は黒霧に渡しておく。
それ以外は保留で、やばい物はインベントリにしまっておく事にする。
全員を送り出した所で、次……ちょっと研究開発。ちょっとだけね。
◇
取り出したるは、『血塗れの君(ブラッディ・ジャック)』。『ジャック・オア・ジャクリーン』。『形代金』。『万象の遺志』。『名もなき心珠』。『混沌の揺り籠』。『人形の宝珠』『グラトニーアーム』。『無色の誕霊石』。
先ず、人形の宝珠をベースに、魂魄の因子を回収してスキルを生み出す混沌の揺り籠。
様々な物質や形状に高い適応力を誇る名もなき心珠。
魂魄の因子を回収して体の形を変更出来る万象の遺志。
無数の凡夫達の能力を掻き集めた器用貧乏なジャック・オア・ジャクリーンを投入。おまけで僕の因子をひとつまみ。
これにより、超万能適応型心核が完成。
この宝珠ベースなアイテムは、内部に膨大な知識と知能を有しており、それが故に凡ゆる物質に適応可能であり凡ゆる性質を受け入れる事が可能となっている。
続いて、変幻自在の形代金と形状自在の神珍鐡を五分五分(ヒフティー・ヒフティー)で混ぜ合わせて人型の素体を作り、そこにイコルをちょっぴり入れてからコアを投入。
敵の因子を回収して武器を作るグラトニーアームと、魂の一部を回収してジャック・オア・ジャクリーンに取り込む事が出来る血塗れの君(ブラッディ・ジャック)を装着した。
一応人型のマネキンみたいな見た目にしてあるが、ここに主人格を入れれば形状は大きく変化する筈だ。
因みに現時点で一番消耗した作業は、神霊金属を合金化させる作業である。
まぁ、消耗と言っても、そもそもコアにしても金属にしても適応力が高い代物ばかりだったので、強大な力を持つ神器の類いを作ったにしては驚く程少ない消耗だが。
では、これに誰の魂を吹き込むのか。
……予ねてから、どうにか利用したい強大な魂が2つと無数の魂があった。
今回はソレ、ナリファンとベルゴ、そして無数の雑魚悪魔獣(デモンビースト)の魂をリサイクルする。
ナリファンとベルゴに関しては、どちらも殆どぶっ壊れているが、経験という名の才能は健在なので、魂はそのまま利用する。
問題の悪魔獣(デモンビースト)の魂は……およそ20万体分を使う。
この魂は、悪魔達がモンデシウル共和国やエルデホート港公国を襲った時の物と、ナリファンが開いたゲートから押し寄せて来た物。
レベルは、低い物で10代、高い物だと40くらいの……雑魚である。
これらの魂から、過分なエネルギーを没収、シエスタ中のうーたんの飴工場に流し込みます。
レベルが低かろうと、魂の持つエネルギーは膨大なので、それらを一々処理していると、普段の僕ならともかく今の僕では手間なので、黒霧が担当だ。
完成した大量の飴は、クランインベントリからレベル限界に至っていない配下の子達に分配し、直ぐ消費する様に指示を出しておいた。
搾かす……と言うと言い方が悪いが、そんな悪魔獣達の魂を、血塗れの君(ブラッディ・ジャック)で回収、群体魂魄化を施した。
確たる意思を持たないこの群体魂魄には、アイテムボックスのスキル持ちもいるので、そこに無色の誕霊石を入れる。
これで、大まかな準備は全て揃ったと言えよう。
後は、誕霊石から湧き出すジェル状の生命エネルギーに生命の宝石(リ・バース・ジュエル)の粉末を微量混ぜる。
そして、改造済みナリファンと、悪魔の宝珠を投入した改造済みベルゴの魂魄、悪魔獣達の中でも一際強かった鮫獅子と羊熊の魂魄を、血塗れの君(ブラッディ・ジャック)とは別口で群体魂魄に接続。
最後に、コトノチャンとうーたんの力を最大限に使って、名付けを行なった。
ペルセポネ LV648
ベルゴ LV600
ナリファン LV602
コレー LV303
クーロス LV301
若干レベルにズレがあるのは、演算の大部分を黒霧にやらせたから。
ペルセポネの本体となる魂魄は、結鶴瑠の討伐報酬である名もなき心珠がベースとなり、それに無数の知識と技術、悪魔獣の性質を付け足した群体魂魄だ。
要は、魂が完全にフラットな、頭が良くて何でも出来て戦えるベビーと言った所である。
その容姿は……まぁ、精霊と言いゴーレムと言いパフィ娘達と言い、性別が無い奴は大抵僕の真似してくるんだよね。
で、実際僕に形が近いと、僕の属性魔力を若干受容しやすくなる訳だ。
体型や髪の長さはほぼ僕。髪は、無色の性質を持つジャック・オア・ジャクリーンの影響か、はたまた無色の誕霊石のせいか真っ白。
目は、悪魔獣達の影響だろう、血に濡れたかの様な赤い尖晶石(スピネル)の瞳。
戦闘力は、現時点ではそう大した物では無い。
群体魂魄と言ってもほぼ搾かすだし、それ以外の魂魄もジャック・オア・ジャクリーンの凡夫魂魄だ。
だが、ベースが名もなき心珠と言う、凡ゆる物質に適応可能な魂。即ち素早く成長し変化する魂魄であり、そして無数の技能者達の援護があると言う状況だ。
彼女は、取り込んだ金属や武具、自らの性質から、戦えば戦う程跳ね上がる様に強くなって行く事だろう。
復活したベルゴとナリファンは、僕直々に魂を調節したり、悪魔の宝珠を魂に取り込んだりした結果、レベル600の悪魔として再誕した。
ベルゴは悪魔竜から『アディニクス』と言う黒竜に進化し、悪魔獣からの進化である微妙な混ざり物感が払拭され、完全な竜種へと至った。
ナリファンの方は、一度既になっているからか、意外とあっさり『サタナキア』へ進化した。
更に、羊熊のコレーと鮫獅子のクーロスは、悪魔獣から混沌獣(カオス・ビースト)と言う単純上位互換に進化した。
コレーの方は、知能が高めなのが影響してか大した変化はなく背中から蝙蝠っぽい翼が生えただけだが、クーロスの方は一角鮫の頭と獅子の体に竜っぽい黒い翼と堕天使っぽい黒い翼が生え、首回りに獅子の鬣が付いて、その鬣の中からタコっぽい触手を伸ばせる様になった。
翼に関してはベルゴとナリファンをリスペクトしての事だろうし、鬣は獅子の部分があるから分かるが……タコの触手は何なの? 鮫に角がある時点で色々混ざってるなとは思ったが。
まぁ見た感じ、悪魔獣は色んな魂が混じりあって出来てるみたいだから、クーロスは獅子7割海の生物3割の配合だったのだろう。
触手は伸縮が割と自在で、クーロスの実力ならそれらを手の代わりにして中級から上級の魔法を連発出来る。
「ペルセポネ、よろしくね」
「…………♪」
頭を撫でると、しばらくボーッとした後、甘える様に擦り寄って目を細めた。寝起きのうーたんみたいだな。
「ナリファン、ベルゴ、コレー、クーロス。皆もよろしくね」
「ははっ、不肖ナリファン、誠心誠意ユキ様に仕えさせて頂きます!」
「あははー、よろしくよろしくねー」
「グォン」
「ゴァー」
皆ちゃんと挨拶してくれる良い子だ。
……ベルゴはね、死んだんだよ。修正困難なレベルだったからね。
「皆の役割はペルセポネの補佐だ。気楽に戦ってね」
「はっ、このナリファンめにお任せください!」
「んー、頑張ろー!」
「グォー!」
「ゴァー!」
「…………むふー」
気合十分なペルセポネ一行は、ペルセポネの健やかな成長の為、先ずは属性相性の良いスキルを……スキル持ちを集めに、深淵に向かった。
……あんまり増やしても許容量があるから、色々と調整する必要があるだろう。