Divine Costume Holy Sword Fafnir

Arrive in the school city of Isperia

貿易都市ロマネを出立してから1カ月が経過し、その間に立ち寄ったのは宿場町2件だけ。

宿場町と言っても宿屋と食堂だけがある人口100人程の小さな村であった。

そして――そろそろ、俺と【乙女の集い】冒険者パーティの旅は終わりに差しかかろうとしていた。

出会いがあれば分かれもある。

そう俺達の目の前には、学園都市イスペリアを囲む壁が見えてきていた。

1週間少し前に、リーダーであり回復も出来る癒し系の女性フローラに、皆仲好くしてくださいとお願いしてから、3人の女性はもう家族のように仲がいい。

俺としても殺伐した雰囲気で長期間一緒に帆馬車に乗るのは辛かった事もあり、本当に助かった。

やはり人間は話し合うと言う事で分かりあえる。

そんな事がよく分かった旅だった。

そう思うと今回の旅は、とても有意義だったとも言える。

また一つ、俺は大人として成長した自分を実感していた。

そんな事を考えていると。

「カズトさん!」

「はい?」

俺は、反射的に答えてしまう。

そんな俺の手をフローラが握り締めてくる。

最近、フローラもミントもフェンネルも積極的にスキンシップを取ってくるようになった。だからドキドキしてしまう。

まるで俺に好意を抱いているように錯覚してしまう。

俺は、そんな自分の希望的観測を否定するかのように、『そんな事はありえない、そんな事はありえない、そんな事はありえない!』と何度も自分に言い聞かせた。

だって、彼女達みたいな良い子達が、俺に好意を抱くとかありえない。

それこそ、どこの小説の主人公だよ!と突っ込みを入れたくなるくらいだ。

まあ、最初は俺と誰が寝るかで喧嘩していた彼女達も、最近では俺ときちんと話してくれるし、やはり一カ月近くも一緒に行動していると仲好くなれるんだな。

「じ、じつはですね……カズトさんがまだ結婚できる年ではないと聞いて……」

ああ、たしかにそんな事を聞かれて答えた記憶があるな。

結婚は成人してからが普通らしいから、俺だとあと3カ月後くらいか。

その話をした時、3人とも――とても落胆していた。

まぁ、その後すぐに俺を抜かした3人で話して元気を取り戻していたが。

「まぁ……そうだな」

おれはフローラの言葉に頷く。

当分、結婚する気なんてないし。

「それで、私達3人でこれをプレゼントに作ったんですけど受け取って頂けますか?」

「これは、何かの毛のミサンガか?」

「はい! カズトさん! 左手を出して頂けますか?」

俺はフローラの言葉に頷きながら左手を差し出す。

するとフローラが俺の左手にミサンガを巻くと何やら魔法を唱えた。

魔法陣が発動しなかった事から、俺には何の魔法かは分からないが俺の体に作用する物ではないから問題はないだろう。

「ずいぶんとなめらかな毛だな。色は金色と赤色と青色か」

俺は肌触りの良い糸を何度も撫でる。

すると。

「カズトさん、そこまでされると恥ずかしいです」

ふむ――。

なるほど、そういうことか!

つまり手作りのプレゼントをあまり大事にされると恥ずかしいと思う。

そんな乙女心と言う奴か。

でも困ったな……俺は彼女達に返せる物がないぞ?

俺はアイテムボックスの中を確認していく。

すると――。

――1時間後。

俺と【乙女の集い】から【淑女の集い】に冒険者パーティ名を変えた彼女達。

フローラとミントとフェンネルは冒険者ギルドに立ち寄っていた。

もちろん、達成書類の印鑑を押すのがメインであったが、ついでに彼女達に渡すものがあったのだ。

「3人とも少しいいか?」

俺も、あまり女性に個人的に物を渡すのはした事が無い事から少しソワソワしてしまう。

何度か咳き込みながら。

「フローラとミントとフェンネルに、ミサンガのお礼と言うかお返しに渡したい物がある」

俺の言葉に3人とも顔を赤く染めて俯いてしまう。

俺だって女性にお返しを渡すのは初めてで恥ずかしい!

だが心のこもった物をもらったのだから返さないとまずい。

俺は冒険者ギルドの職員に提示された裏庭に、アイテムボックスからレッドドラゴンを3匹出して置く。

すると3人とも驚きの表情で見てくる。

まぁ手作りしてくれた、このミサンガと比べれば適当に倒したレッドラゴンまるごと3匹はちょっと味気ないが許してもらいたい。

俺は不器用な人間だからな。

俺は、フローラ、ミント、フェンネルを順番に見ながら語りかける。

「これが、君達からもらった心からのプレゼントに対しての俺の精一杯の心からのお返しだ。受け取って貰えないだろうか?」

俺の言葉に3人とも涙くんで『はい! 私達、カズトさんが成人するまで待っています!』と答えてきた。

なるほど、俺が成人の時には、また祝ってくれると言う事か――。

本当に出来た良い子達だな。

俺は頷き答えた後、彼女達に手を振られながら冒険者ギルドを後にした。

俺は町の中を歩きながら、少しだけ感傷に浸る。

やはり、3人の良い子達と旅をしていただけに、少しだけ哀愁を感じるのだろうか?

またいつか会えるような予感がする。

さあ、学園都市イスペリアに到着した事だし、目指すは貴族学園イスペリアだな!