Divine Costume Holy Sword Fafnir

It's convenient to lie.

俺は笑いかけながらラッセルの肩を何度も軽く叩いていると学園長であるユニバースやエルカが近づいてきた。

その後ろには、30人近い完全武装の騎士達が控えている。

そして、俺とラッセルをユニバースと騎士達は睨みつけてきている。

まぁ兵士や貴族の私兵だけなく、他国から預かっている貴族の子弟までも精神的にダメージを追っているのだから、貴族学院イスペリアとしては致命的失態と言えよう。

それどころか、貴族学院イスペリアは責任を取らされる可能性もあるし下手をしなくても学園長に全ての罪が着せられる可能性がある。

まぁ問題は、平民の身分である俺に圧倒的戦力差で負けておいて粛清できるかどうかという話になるが……。

「離せ! 何を気安く話しかけてきているんだ!」

ラッセルが、俺の手を払いのけ学園長であるユニバースに近寄っていく。

するとユニバースはラッセルを一瞥したあと。

「教師ラッセルを捕まえなさい」

ユニバースの言葉と同時に、後ろに控えていた騎士達がラッセルを地面に叩きつけるとその体を拘束していく。

拘束道具には、魔法式が書きこまれているのが分かる。

魔法式を見て俺は眉元をひそめる。

「おい、それは魔法発動を妨害する拘束なんじゃないのか?」

「なっ!?」

ラッセルが驚いた顔で学園長を見るが、学園長の視線は俺にまっすぐに向けられている。

そして、その視線は俺の言葉を聞くと同時に細められた。

「カズト先生は、魔法の知識も詳しいと見える。一体、その年でどれだけの勉学を詰まれたのか……」

俺は肩をすくめて学園長に語りかける。

「さあな、それよりラッセルだけでいいのか? 今回、お前達が他国から預かってる生徒達を叩きのめしたのは俺だがいいのか?」

「カズト先生が抵抗しないのなら……それも考えておりますが抵抗されるのでしょう?」

「まあ当たり前だな、それに平民一人を相手にして兵士と魔法師を合わせた700人が一方的にやられたとなったら、それが真実でとなったらお前らも立つ瀬がないだろう?」

俺の言葉に学園長だけではなく周囲の貴族までもが顔を歪めてくるが圧倒的な戦力差を見せつけた以上、彼らが出来る事とすれば……。

「分かっておる! ま、まさか……貴様! それを理解していた上で決闘を受けたと言うのか? ぐぬぬぬ……」

そう、彼らが出来る事と言えば唸るくらいだ。

俺を倒すなら後ろに控えてる兵士1万人以上は連れていないと戦いにすらならないからな。

「まあ、あれだ! 俺から一つ提案があるんだが?」

「提案?」

俺の言葉に学園長が怪訝な表情で聞いてくる。

俺は学園長の言葉に頷きながら学園長とエルカとラッセルにだけ聞こえる音量で話す。

「ああ、そうだな。たとえばだ! 学園長は貴族の権力を振りかざした教員達に現実を分からせてやりたかった。その根底にあるのは、上には上がいると言う事。そして弱者を労わるという貴族的精神を、淀んだ貴族至上主義者に教えたかった。さらに言えば、その貴族至上主義に悪影響された生徒達に荒療治とは言えきちんとした道徳を伝えたかった。そして……それを行ったのはラッセルと俺であって、学園長は責任を取る事も辞さない! という美談にしてみたらどうだ?」

「「「なんだと!?」」」

3人が驚いて俺を見てくる。

そう、貴族は美談という言葉に弱い。

まぁ自分の命より誇りを取るような奴らだからな。

こういう話には弱いんだろう。

しかも自分が失脚しても学園のために俺はがんばった!すげーというアピールまで出来てしまうのだ。

英雄思考をもつ貴族が飛び着かないはずがない。

まぁ俺が話し始めると同時に学園長とエルカとラッセルの後ろに控えている騎士達は何とも言えない顔をして俺達を見てきているが、それは気にしない事にする。

まあ、あともうひと押しが必要かもしれないな。

「じつはな、王女が俺をこの学園に臨時の教師として派遣したのはイスペリア貴族学院が貴族至上主義と称して弱者である平民を差別し弾圧していたからだ! 俺はそれを改善するために送り込まれたんだよ」

「ええー……」と、エルカが驚き。

「なんと……」と、学園長が目を見開き。

「そうだったのか」と、ラッセルが表情を青くした。

俺は3人の表情を見ながら。

「ああ、だから分かるよな?」

俺の言葉に3人とも頷いてくる。

王女様の権力は絶対だな、マジすげーわ。

というか、王女様の手紙からはイスペリア貴族学院の講師をしてくださいとしか書いていなかったが、まあ生徒達の勉学の環境を整えるのも講師としての務めだろう。

この程度は、拡大解釈の内と思っておくとしよう。

「分かった、ルメリア王女がそう言うのでしたら……君! ラッセル先生を解放しなさい」

学園長の指示に従って騎士団はラッセルに嵌めていた魔法封じの腕輪などを外していく。

俺達が小さな声で話してるのを周囲の貴族や市民達は怪訝そうな表情で見てきている。

さて、今度は彼らを説得しなければいけないな。