Divine Costume Holy Sword Fafnir

Storm Calling Sword Demon Games (4) Eryl side

私は、闘技場に上がったまま、魔法により別空間へと変質し広大な戦闘フィールドとなった場所で、白銀の鎧を身に纏った10人の騎士と視線を合わせた。

「申し訳ありませんが、闘技場から出るわけにはいきません」

「ほう? 一応、忠告しておくが――我々はミスリルの傭兵だが?」

男の言葉に私は、唾を呑み込む。

傭兵団ミスリル。

カイゼル帝国が要する傭兵団であり、南方の国境でも姿を現している侵略者の先鋒。

アルト公国では、傭兵団ミスリルの入国は禁止されているはず。

それなのに、入国する事が出来たということは――。

「そんなに簡単に素性を晒して良かったのですか?」

10人の騎士達を視界におさめながら間合いを取りながら語りかけると、私に語りかけてきた男は、「別に問題はない。貴族が我らの後ろ盾としているかぎり、平民の貴様が何を言おうと意味を為さないのだからな」と、告げてきた。

「そうですか……なら――」

私は腰に差していた木刀を抜くと、右手に持ち男たちへ向けて一歩前進する。

「なかなか、様になっているな……学生のレベルではだが! 実践経験の浅い貴様がどこまでやれるのか見せてもらおうとしよう! 全員、抜刀!」

私の目の前で、傭兵団ミスリルの男たちが一斉に腰からブロードソードを抜き放つと切っ先を私に向けてきた。

「――そ、それは……」

私の呟きに男は狡猾な笑みを浮かべてきた。

「刃引きしてる得物ではない?」

「その通りだ。どうして貴様に、舞台から降りる事を勧めたと思う? それはな! 事故で貴様を殺しても問題にならないようにだよ。まぁ、安心するといい――悲鳴や画像は外には届かないように工夫させてもらっているからな!」

男の言葉が言い終わると同時に9人のミスリルの傭兵が近づいてくる。

私は一歩前へ出ながら、体内の魔力を電気信号へと変換しつつ、四肢の肉体の操作を脳を通さずに直接行う。

そうすることで人が思考してから神経を通して動かすまでの時間――ゼロコンマ数秒を先んじて動く事が出来る。

カズト先生の話だと、肉体や脳を動かすときには電気信号のやり取りが必要になると言っていたけど、魔法が使える人間の場合には、思考に魔力が反応してから体を動かしているために魔法が使えない人間よりも動作に時間がかかるらしい。

だから、魔法を使いすぎると体内の魔力がうまく反応せずに体が動かせなくなるとカズト先生は私達に教えてくれた。

そして、初動の動きがあまりに早い場合――。

私は木刀を腰に戻すと、近づいてくるミスリルの傭兵達の懐に入り込み左手のひらを添えてから右手で左手のひらの甲を押す。

その際に体内で練っていた電気に変えた魔力を放出する。

すると、私に斬りかかろうとしていた9人のミスリルの傭兵は、その場に前のめりに倒れこんだ。

カズト先生の話だと、鎧通しという技らしいけど……。

「き、き、きさま……い、一体何をした?」

最初に話しかけたきた男には、何が起きたのか分からなかったらしい。

カズト先生は言っていた。

人間が知覚できるのは0.5秒前の現象であり、それを超えた速度で攻撃・移動を行った場合、相手がそれを認識する事はできないと。

「別に普通に戦っただけです」

「そんなバカな事があるか! 動きがまったく見えなかったぞ!」

「見えないと言われても困ります。あえて言うなら、貴方たちは思っていたより弱かったということしか――」

私は事実をありのまま話す。

何故なら彼らくらいの力では、5人の中で一番攻撃に適してない私ですら倒す事はできないと思うから。

「お、お前たち!」

私の言葉を聞いた男性は、大声を張り上げる。

すると周りから10人のローブを身に纏った男たちが姿を現した。

「こ、この化け物を何とかしろ!」

「化け物? 私程度で?」

男の言葉に私は笑いたくなってしまう。

私程度を化け物っていうなんて、そんなのカズト先生やエルザさんに失礼だから。

黒いローブを身に纏った男たちは私の方を見ると、ローブを脱ぎ去って私を見てきた。

そして黒い筒のような物を向けてくる。

とっさに嫌な予感がして、私は木刀を抜くと正眼の構えを取り――。

放たれた鉄の塊のような物をすべて弾いた。

男たちに命令をしていたミスリルの男と、黒いローブを着ていた男達が驚いた表情を私に見せてくるけど、相手は手段を選ばずに私に攻撃をしてきたのだ。

なら、こちらも手加減をする必要はない。

ローブを着ていた男たちを気絶させた後、最後に傭兵団ミスリルい所属している男の鳩尾を攻撃し気絶させた。

殴る前に「く、くそがああああああああ」と、言っていたけどまあ細かいことは気にしないことにしておく。

どうせ、また何か問題が起きそうだし。