Divine Costume Holy Sword Fafnir

Divine Costume Holy Sword Levantine (5)

剣魔大会が行われていた建物は、無残に崩壊しており多くの怪我人が横たわっており、学園長の指示で多くの魔法師達が治療を行っている姿が目に移った。

「カズト先生――!?」

そんな中、俺の姿に気が付いたエルカ=スタックが話しかけてくる。

「カズト先生、どうしましょう? 生徒達が――」

「だいたいの話は聞いている。俺が教えた生徒達がアレを抑え込んでいるのだろう?」

「は、はい……」

「なら、早く行かないとな」

歩き出そうとしたところで、道着の袖を掴まれる。急いでいることもあり「エルカ――悪いが、今はそんな時間は……」と、エルカに言いながら振り向くと「少し良いだろうか?」と、見たこともない髭を生やした小太りの親父が立っており上質な生地を使って編まれたと思われる服には所々、血がついている。

「今は急いでいるんだが?」

「――今回は、申し訳なかった……」

男は突然、謝罪してきた。

それも土下座をしてまでだ。

いきなり土下座謝罪をされても意味が分からないんだが?

「エルカ、こいつは誰だ?」

「この方は、アルガルド公爵家ファルダニア・フォン・アルガルド様です」

「アルガルド公爵家……知らないな。――で、どうしてこいつは俺に謝罪をしているんだ?」

「そ、それはイスペリア学園の教師ではなく私が直接――今回、我々が雇った者の中に……」

「つまり、魔族が入り込んでいたのはお前たちのせいなのか……」

俺はファルダニア公爵の襟元を持つと、そのまま持ち上げる。

魔神族グランザードやラフルクライン――ルメリアなら国境線で食い止める事が出来ただろうに、国境線でそれが出来なかったのは、公爵という強権を持っていた奴らが手引きしたからだ。

つまり、今回の問題は全てファルダニア公爵や、手引きをした貴族達にあると言って間違いない。

「お前らの……身勝手な行いでどれだけの人間が傷つき死んだと思っているんだ! 分かっているのか? ここで傷ついてる奴らはお前らのくだらないプライドのせいで傷ついたんぞ? 死んだ奴らだっているんだ! お前らは、その事を謝ればそれで済むと思っているのか! くそがっ!」

「カズト先生!」

「ちっ!」

エルカの言葉に俺は手を離す。

今は、こんな雑魚を相手にしてる場合じゃない。

「ファルダニア、お前たちが用意した傭兵が魔族だと言うことはすでに判明している。いくら謝罪をしようと事実は変わらない」

俺はファルダニアを一瞥した後、神兵へ向かって走りながら後ろをチラリと見る。

そこには、懇願して震えている貴族が一人いるだけで――。

「くそっ! 悪党なら最後まで悪党らしくしていろよ」

苛立つ。

どうして――惨事が起きなければ、体験しなければ理解できないのか……。

それなら最初から、手引きをしなければよかった。

それだけの事が何故、理解できなかったのか……。

「カズト先生……」

エルカが、心配そうな表情で俺を見てくる。

「分かっている……今更、こいつら貴族を攻めたところで何かが変わる訳じゃないからな……」

「…………はい。そうですよね――」

どことなく納得がいかないエルカを見たあと、俺は神兵に向けて走り出す。

ルメリアが生きていれば、あとは何とかするだろう。

この国の法がどんなだか俺には予想はつかないが――。

俺は崩れた建物を横目で見ながら走り続け数分で駆け付けた。

そこは周囲に多くの亡骸が転がっている場所で――。

「カズト君?」

振り向くと、そこにはルメリアが立っていた。

右肩からは血を流しており、おぼつかない足取りで近づいてくると俺に体を預けてきた。

「すまない――」

「ううん、カズト君が戦った人……カズト君のお父さんだよね? 私、見たことあるから……」

「そうなのか?」

ルメリアの言葉に俺は、息を呑み込んだ。

つまり……あの男――カイザルドの言っていた言葉は全て……。