Divine Costume Holy Sword Fafnir
Buried History (12)
「……こ、これは……地龍ではないか――?」
手を震わせながら近づいていくギルドマスターのランスロットは、俺が出したドラゴンの体を触りながら「この肌艶に固さ――まさしく天然モノだ!」と叫んでいたが、たかがドラゴンの一匹や二匹で大げさだなとしか思えない。
まぁ、高く売れるなら、それに越したことはないだろう。
「――で、これならいくらで買い取ってくれるんだ?」
「――買い取る!? そ、そうじゃな……。まずは解体して血が残っているかどうかも確認せねばならぬし――。アンゼ! すぐに査定をする! 仲買人と担当者を!」
「は、はい!」
ランスロットの命令に、アンゼは走って冒険者ギルドに入っていく。
「カズト様、それで私どもとしては、金貨1500枚のお金を返してもらえればいいんですが……もし、よかったら血だけもらえば、それで――」
妙に遜った言い方になり揉み手をしながら、ローグが俺に話しかけてきた。
「血だけでいいのか?」
「はい、もちろんですとも! それだけで金貨1500枚をチャラに……」
「まてまて! 地龍の血だけでも金貨2000枚はいくだろう! しかも、これはダンジョン物ではなくて天然物だぞ! 金貨1万枚は下らない!」
俺とローグが話していると、ランスロットが話しに割って入ってきた。
ランスロット、ローグ二人とも欲望を丸出しにしているのが俺にも分かる。
正直言って、ここまで来るとメンドクサイ。
「ギルドマスター、あとは任せても大丈夫か?」
「――う、うむ」
「それじゃ、何時間後にくればいい?」
「そうじゃな……明日の昼頃には……」
「分かった。―ーで、ローグは血が欲しいようだから血を金貨1500枚分メインで渡してやってくれ」
「わかった」
ランスロットが頷くのを確認しつつ、ローグのほうを見ると彼は力強く頭を前後して俺の話を肯定してきた。
どうやら、本当に地龍の血液が欲しかったらしい。
「ローグ」
俺は男の名前を呼びながら手を差し出す。
ローグは頷くと、3枚の手配書と契約書を俺に渡してきた。
「これがフェンネル、フローラ、ミントの契約書でいいのか?」
「そうなりますな。それを破けば――って!?」
俺は、ローグの話が終わる前に手配書3枚と契約書3枚を破り捨てた。
「これで問題ないんだな?」
「はい……。まぁ、本来でしたらお支払頂いてから、お渡しするのですが……、目の前に現物がある以上、問題ないでしょうな」
「ふむ……、それじゃ、あとはギルドマスターと話をしてくれ」
「わかりました。あなたは仲良くしておいたほうがいいと思っておりますので、これをどうぞ――」
ローグが差し出してきた紙を受け取る。
そこには、バルバドス商会債権取立部門ローグと書かれていた。
「債権の取立ね……」
「はい、それでは今後とも、ご贔屓を――」
俺は小さく溜息をつきながら頷き、その場を後にした。
「カズトさんは、アイテムボックスを持っていましたから、すごい方だとは思っていましたけど……」
冒険者ギルドを出たあと、フローラの仲間が泊まっている宿屋に向かっている途中、フローラが俺に話しかけてきたが「フローラ」と、俺は彼女に語りかける。
すると――。
「え!? あ、はい……」
フローラが、すぐに俺が纏っている雰囲気を察したのか立ち止まり振り返ると俺を見てきた。
俺だって、小さなことを言うつもりはないが、本人の意思の関係ないところで婚約者として見られるミサンガを着けられるのは困る。
どうりで、俺の生徒達が修行中にミサンガを見たとき、へんな表情をしたと思った。
「こういうのは……本人が知らないうちにつけるのはよくないぞ?」
「……はい」
俺は、フローラにミサンガを見せて注意しながら、手に巻かれていたミサンガを外すと彼女に渡した。
「ごめんなさい……」
「とりあえずだ、少し幻滅した。お前達は冒険者としてきちんとしていると思っていたんだがな……」
「……で、でも! カズトさんも私達を娶ってくれるようなことを言ってましたから!」
「――ん? そんなこと言った覚えは……」
「私達を、褒めてくれましたし! 喧嘩した時だった家族にって……あれです! 3人とも結婚すれば家族になるわけですし――」
「……」
あれ? もしかして俺が言った言葉が彼女らを誤解させて――。
迷っていると、フローラが瞳に涙を湛えると小さな声で泣きはじめてしまった。
もちろん、回りで歩いていた人は、美少女が泣いていることにすぐに気がつき、俺に向けて殺気を向けてくる。
俺は何も悪いことはしてないのに……。
いや、誤解を生むような話し方はしたか――。
「わかった、俺が悪いとは言わないが誤解から生じたことだし、フェンネルやミントと一緒に、今度のことについて一度、話し合うとしよう」
俺は仕方なく妥協案を出した。