Divine Costume Holy Sword Fafnir
Buried History (24)
「それでカズトさん、私達はどう致しましょうか?」
フローラが神官の証である白い杖を両手で握りながら俺に話しかけてきた。
「そうだな、フェンネル! お前はどうする?」
「私は、ミントと一緒にいるよ。ミントは、本を読み始めると周囲への注意が散漫になるから」
「そうか。なるべく変なところに触らないように気をつけろよ?」
「わかった!」
「ミントのことはフェンネルに任せるとして、俺達は他の建物をチェックするとするか?」
俺の言葉にフローラは頬を少しだけ朱色に染めると「――は、はい!」と、元気よく答えてきた。
本が多く置かれている建物から出たあと地下街を歩く。
「まずいな――」
俺は周囲を見ながら、一人呟くとフローラが俺の腕を掴んでくる。
「何か居たんですか?」
顔を見上げながら俺を見てくるフローラに、少しだけ溜息をつく。
「いや、ミントが居ないからかわからないが――」
俺は、ミントが個々に体の周囲に纏わせていた光の球を指差す。
光の球は一人一個という具合で、俺達の周囲を回っていて周囲を照らしている。
その明りが少しずつ弱まっていっているのだ。
「そういえば、以前にミントが言ってました。明りなどの持続系魔法は発動した術者が近くにいないと何れ消えてしまうと――」
「たしか祖父にも、同じようなことを言わた気がするな。それなら、なんとかなるか?」
「なんとかですか?」
フローラが首を傾げて問いかけてくる。
すると彼女の金糸を思わせる美しい髪の毛が、光の魔法に照らされ幻想的に光を散らす。
「まぁ思い付きだが――」
首から提げているネックレスを触りながらアイテムボックスを起動する。
空間に裂け目が出来たところで腕を突っ込み木刀を取り出す。
そして、体内の生体電流を操作し木刀に流す。
流された生体電流は、木刀に刻まれている魔法回路を発動。
増幅された生体電流は体内を巡り、再度、木刀へと流れる。
「さて、上手くいくかは知らないが――」
薄っすらと青い光を纏った木刀を、空中に浮かんでいる光の玉に近づける。
すると、木刀を包んでいた増幅された生体電流の光が、少しだけ弱まると同時に光の球の輝きが一気に強くなる。
「すごいです! カズトさんは、魔法も使えるんですか?」
「いや、魔法というより消費していたエネルギーの補充をしたって所だな。以前に子供達に桂木神滅流を教えたとき、生体電流を使えない子供達ように、魔力を電気に変化させて体内を今日する術を考え出したんだ。おそらくだが、生体電流と魔力は類似性があるのかもしれないな。だから、ミントが作りだした明りの魔法である光の球の魔力も補充できたんだろう」
「良くわかりませんけど、すごいんですね」
「まぁすごいかどうかと聞かれたら、魔法がすごいと思うが――」
「そうなんですか?」
俺はフローラの周囲に浮いている光の球にも増幅した生体電流を注ぎ込む。
それによりフローラの光の球も、最初に作られた時のように煌々と光を発し始めた。
「ああ、魔法陣と詠唱と発動キーだけで、事象を変革するからな。普通に考えて物理法則や質量保存の法則を無視しているとしか思えない。はっきり言って謎すぎる」
「もしかして私の回復魔法も?」
「そうだな――。神官が使う神聖魔法に関してもわからないことだらけだからな」
俺は肩を竦めたまま答える。
「でも、カズトさんの使っている技も魔法みたいなものに見えるんですけど?」
「それは違う、俺の使っている桂木神滅流は細胞を動かしている電流、つまり極少量の電化を利用しているんだ。それを、幼少期から操作する術を身につけるからこそ、技が使えるようになる。つまり、あくまでも人間が理解できる物理法則内で発動している技に過ぎない。まぁ、それでも――」
俺は、口を閉じる。
続けて話そうとしていたのは、桂木神滅流:最終奥義だからだ。
桂木神滅流の中で特異とも言える技。
それこそが神装聖剣。
ただ、神装聖剣だけは愛称があるからなのか今まで使えたのは3回だけ。
「どうかしたんですか?」
「いいや、なんでもない。とりあえずあそこの店を見てみるか?」
「はい!」
俺とフローラが足を踏み入れたのは、様々な瓶に色鮮やかな液体が入ったものであった。
「カズトさん、ここは――」
フローラが俺に話しかけてくる。
俺は棚から瓶を1つ手に取りかかれている内容を確認していく。
「アルコール10%か……、どうやら、この店はお酒を扱っている店だったようだな」