――桂木神滅流:疾風雷神

肉体の生体電流を操作し増幅後に、膨大な生体電流で肉体の視神経と細胞増殖制御を行う技。

そのことで、常人の数倍から数十倍の肉体動作を行う技術。

視神経と身体能力を強化したまま、一呼吸でカスパーとの距離をゼロに詰める。

すると、カスパーは「ふむ」と呟くと同時に俺から距離を取った。

「さすが機構戦術カツラギ――、技は健在というところですか? それよりも……」

カスパーは俺と対峙しながらも、俺の後ろにいる3人を見て目を細める。

「たかが、メディデータが私の動きを読んで攻撃してくるとは不愉快極まりないですね……、まずは――」

男が、言葉を最後まで言い終わる前に、目の前から姿を消す。

それは、歩法などという武術で使う移動術とは、まったくの異質であり気がついた時には目の前から消えていたと言っていい。

ただ、体は自然と後方へ向けて跳躍していた。

空中で体を捻りながら、視線をフェンネルからフローラ、ミントの順に這わせていく。

そこで、フェンネルが木刀を何もない空間に向けて振るう様子が見えた。

「――何!?」

フェンネルが振るった木刀は空間から滲み出るように、現れたカスパーの胸元を捉えて重厚な音と共に吹き飛ばした。

カスパーは、十メートル近く地面の上を転がっていくと、すぐに立ち上がったが、その表情は驚きと共に体を震わせているのが分かる。

「ばかな……、信じられん! どうして、メディデータごときに私の動きを感知することが出来るのだ? どういうことだ!」

フェンネルは、俺が感知するよりも先に、カスパーが現れる可能性がある空間に木刀を振るっていた。

まるで、フェンネルが振るった場所にカスパーが引き寄せられたように見えた。

「えっと……」

俺とカスパーの視線に晒されたフェンネルは、「え? 何? 何か私、変なことした?」と、ミントとフローラに語りかけている。

「さあ? 何なのでしょう? 何かおかしなことをしましたでしょうか?」

フェンネルの問い掛けに、フローラは首を傾げていたが――。

ミントが「あっ!?」と、言う顔をすると。

「たぶんだけど……、あのカスパーは私達のスキルを理解していない」

「私達のスキルをですか?」

「うん、たぶん――」

ミントは、フローラの言葉に答えながら魔法を展開させる。

すぐに自分が狙われていることを理解したカスパーは空間に溶け込むように姿を消すが、それに合わせてミントの杖が何もない空間を指していて――。

「エクスプロージョン!」

何もない空間が突然、爆ぜる。

それと同時に「ぎゃああああああああ」と言う声が聞こえてきた。

「うん、確定。こいつ、私達のスキルを理解してない」

ミントがスキルと言っていた言葉。

それを俺は祖父から教えてもらったことがない。

あるのは魔法の公式や基礎理論に応用であった。

もしかして、俺が知らない技術体系が存在している?

「――こ、こんな……バ、バカな……」

煙が晴れた中から、ボロボロになった男が姿を現した。 

満身創痍の男は、すでに俺には視線を向けていない。

ミントを睨みつけて「い、一体、どういう――「エクスプロージョン!」――ぎゃああああ」

カスパーの言葉の途中でミントが魔法で、男を消し飛ばした。

「――ふう、モンスターより弱くて助かりました」

ミントが、俺を見てから微笑んで語りかけてきたが俺としては何と言えばいいのか分からなかった。

それは俺が知らないスキルという物を調べる必要が出てきたからだ。