Divine Costume Holy Sword Fafnir
Imperial capital luzenia (19)
城門を抜けて帝都ルゼニアの通りを幌馬車で走っていると、御者席の隣に座っていたアリスがしきりに周囲を見渡していた。
「知り合いでも居たのか?」
たしかエルフガーデンのある大陸から来た時に、帝都ルグニカに来たと言っていたからな。
もしかしたら気候変動に巻き込まれて知り合いのエルフなどが帝都に避難しているのかもしれない。
「いえ、以前に帝都に来た時よりも人通りも出ている店の数も少ないと思いまして――」
「そうなのか?」
「はい」
その様子からアリスが嘘をついているようには思えない。
「カズト君」
「ルメリア、お前は顔バレしたら後々面倒になるんだから、幌馬車から出るなよ?」
「そうじゃないの。アリスさんが言っていたわよね? 帝都ルグニカは人口100万人を超す都市だって」
「それは聞いていたが……」
「町の規模からして、人口100万人の割には人通りが少ない。しかも、出店だけでなく――、ほら! アレを見てみて」
「看板をか?」
「――そう。看板が掛かっているのに閉まっている店が多い。これって、おかしいと思わない?」
「つまり何か問題が起きていると? そういうことか?」
「ええ、おそらく――。ただ、その原因は……」
「気候変動の影響で他国に移動したという考えもあるんじゃないのか?」
「カイゼル帝国と隣接している私のアルト公国と、隣国のローレンス王国とは国境線を睨んでいる状況だから、それは無いわ。少なくともアルト公国には、カイゼル帝国の移民は確認出来ていないから」
「そうなると……」
ローレンス王国に移民が殺到した可能性も一瞬考えるが貿易都市ロマネ近くの国境沿いの砦とカイゼル帝国の砦は一触即発の状態だった。
つまり、カイゼル帝国の民衆が他国へ亡命できる可能性は低いと言わざるを得ないだろう。
「そうだな……、ローレンス王国も……」
「ええ、だからおかしいの。アリスさんも、そのことに気が付いて落ち着かないんじゃなかったのかしら?」
「――いえ。私は、ただ――、以前は、もっと活気があった都市だったのに……、まるでゴーストタウンみたいになっていて気になっただけです」
「とりあえず、まずは宿の手配をしてから聞き込みでもするとするか」
「そうね」
「聞き込みは私も手伝います!」
「アリスとルメリアは宿で休んでいてくれ。二人とも旅で疲れているだろう?」
「カズトさんは?」
「カズト君、あまり一人でしょい込むと疲れちゃうわよ?」
無言のまま頷いておく。
――だが、多少は無理をしてでも情報を集めることが先決。
何せ、何時――。厳那が行動を移すのか分からないからだ。
身内がおかした不祥事は何とかしなければいけない。
真意を確かめる意味合いも込めて――。