Divine Costume Holy Sword Fafnir

Meet My Father and Mother (3) Kaizald side

「王太子様! お待ちください」

俺の後ろから、騎士達が追従してくる。

「遅いぞ!」

「申し訳ありません! 軍の編成に時間を取られまして――」

「他国からの介入を受けているのだ。迅速に行動し民の生命と財産を守るのが貴族の務めだろう!」

「ハッ!」

進軍を開始し数日後。

目の前には城塞都市ルビアンドの城壁が見えていた。

「カイザルド様。現在、城塞都市ルビアンドは隣国シルフィード王国の軍勢に攻められています。偵察の兵によれば負傷者も多数、備蓄していた蓄えも少なく陥落も時間の問題だと――」

馬に乗りながら報告を聞いた俺は『遠目』の魔法を発動。

敵の数を『探索』の魔法を使い把握。

「敵兵の数は3000か。これは――」

「こちらの兵数の3倍です。如何いたしましょうか?」

「如何も何もないだろう? 我々はカイゼル王国の騎士団であり、俺は王太子だ。そして貴様らは騎士だ。つまりそういうことだ!」

俺の言葉に騎士達が頷く。

すでに数日の強行軍で疲れているはずだが――、自国の民を見殺しにするような者は、この場にはいない。

アルトラス大陸の南部に無数に存在する国。

その中でも小国に位置する王国だが――、自国の民を守る義務が我々にはある。 

――ノブレスオブリージュ

それは特権階級に居る者が果たす義務の意味。

王族や貴族は、民がいるからこそ王や貴族足り得る。

だからこそ、我々は民を守る。

「全軍! 隣国シルフィード王国の軍勢を国境まで押し返せ! 突撃!」

王太子である俺の命令と同時に、数としては1000の騎馬兵が3000を超えるシルフィード王国の兵士達の側面から攻撃を仕掛けるために突っ込んでいく。

「――さて」

俺はその様子を丘の上で見ながら空中に魔法陣を描いていく。

『千の雷、万の雷精、我が元に集いて、我が名に従いて、全てを破壊する天界の轟雷と為せ!』

詠唱が終わる。

それと同時に空中に描き終えた積層魔法陣が光を放つ。

「砕け! 千雷(ブレイブハース)!」

魔法が発動すると同時に、シルフィード王国の軍勢の中心部に近い上空に魔法陣が出現。

無数の巨大な雷が宣戦布告もせずに攻めてきた王国の兵士を蹂躙していく。

――そして攻撃魔法が消えたあとには敵国の80%の兵士が地に伏しているのが確認できる。

そこに、カイゼル王国の騎士団が突撃し敵国の兵士を殲滅していく。

「さすがは王太子様の魔法ですね」

「……そうだな」

俺は溜息をつく。

「戦争は魔法の一発で戦況を左右される物ではない。だからこそ、計略や戦略など多くの術が生み出される。事実、アルトラス大陸の南では小国同士が小競り合いを続ける乱世の状態だった。それが――」

たった一人の魔法で戦況が覆ってしまう。

先ほどの魔法も何十人もの魔法師が組み上げてようやく発動できる魔法に他ならない。

それを一人で発動出来てしまう俺は異常とも言えた。

誰も俺を追従できるほどの魔法や剣技を持つ者はいない。

そんな俺は、何時の間にかカイゼル王国を守る剣と言われていた。

「強すぎるというのもつまらないものだな」

「王太子様、何か?」

「いや――、なんでもない」

俺は、自分よりも強い者がいない事が退屈で仕方なかった。