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Past wars (4) Kaisard side

王都ルゼニアまで、進軍を開始し数日が経過したところで先行偵察をしていた騎馬が戻ってくる。

それを馬上で聞いていた俺とアルダード公爵は……。

「ふむ……カイザルド殿。どう思われますかな?」

「迎え撃つ部隊と、王都への進撃の部隊に軍勢を分ける……と、言う事ですか?」

「それを決めるのは軍を貸しているカイザルド殿だ」

偵察兵が持ち帰った情報では、王都ルゼニアの王城周辺からは絶え間なく黒煙が立ち昇っている状態だと言う事。

それと、共に5千を超える大軍が王都ルゼニアから、此方側に向かってきているという。

本来、王都が落ちていたのなら王城の近辺から黒煙が出ているというのはあり得ない。

つまり、王城は未だに陥落しておらず来るあてもない救援を待っていることになる。

「あまり時間はない……と、言う事を踏まえると――」

「そうなるな。問題は王城に避難している者達は我々が到着するまで指揮を保てるのか? と、言う話になるが――」

たしかにアルダード公爵の言う通り、カイゼル王国は孤立している状態で、どこからも援助は期待できない。

つまり、籠城するだけ無駄だと言う事になる。

そうなると、いつ何時――、均衡が破られるのか分からない。

「――さて、そこで私から提案なのだが――」

「提案?」

「うむ。ルゼニアの王城をどれだけのアドリア兵が取り囲んでいるか分からないというのは事実だが――、王城には必ず抜け道というのがあるのだろう?」

「それは……」

「そこでだ! 我々、アルダード公爵軍が向かってきているアドリア兵を受け持とう」

「いくら何でも、5千の軍を相手にするのは被害が……」

「他国とは言え戦える市民を侵攻の効率化の為に虐殺することを良しとするような弱兵は、アルダード公爵軍の中に一兵もおらん。それにまずは守る場所を死守する事も戦略的には重要な事だ。カイザルド殿は、我らのことを考える前に自国の民のことを考えて行動するのが良かろう」

「……分かりました。この恩は必ず――」

この場で、これ以上の話し合いは無意味。

それに何より、断るのは申し出てくれたアルダード公爵の顔に泥を塗ることになる。

「フェル!」

「はっ!」

「すぐに軍を再編成――、アルダード公爵軍とアドリア軍が対峙すると思われる場所を迂回し王都へ向かう」

「分かりました!」

騎馬兵のみで軍をすぐに再編。

アルダード公爵軍の進軍を横目に森林へ突入し無謀と思える進軍を始める。

――そして、数時間で森を抜ける。

「王太子様!」

「分かっている!」

目の前には、王都ルゼニアの姿が――。

身体強化の魔法を使い、王城周辺で戦闘が行われている音を拾うと共に、生存者がいる事に胸を撫でおろしつつも――、

「フェル! 私は、王城まで繋がる隠し通路を使う。そのためには町を抜けて王城に近づく必要がある」

「分かっています。露払いはお任せください。全軍! 住民を虐殺する野蛮なアドリア兵に鉄槌を!」

私の右手として、軍を束ねさせているフェルの命令に一部の兵士以外が呼応し馬の手綱を操り走り始める。

「俺達もいくぞ!」

砦の中でも、屈強の兵士で構成した50人ほどの部隊を引き連れて俺は隠し通路がある場所へと馬を走らせた。