Late. Tamer's day.

29 Stories Why He Took Leather

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 実は昨日の内にオルトには水臨樹の果実と高級肥料を渡してあったんだが……。

 苗木化に成功し、畑には水臨樹の苗木が植わっていた。やったね! これが育って実が成ったら、色々実験できるぞ。思い切って高級肥料も撒いたし、どう育つだろう。

 東の水臨大樹を見上げる。

 ……いや、あんなデカくならんよな? こんな畑じゃ全く足りないんだけど。ま、まあ、そうなったらそうなった時に考えよ。

「お、赤テング茸はもう収穫できるな。でも1つしか収穫できないのか。なあ、オルト、またこの赤テング茸を株分して育てないといけないのか?」

 だとすると全然増やせないんだけど。だが、オルトは首を振っている。どうやら原木に1回胞子を振りかけたら、何度か収穫が可能らしい。だったらしばらく様子見かね。

 俺は日課になった調合と種まきを早速行う。新たに青ニンジン、橙カボチャ、依頼で頼まれていたワイルドストロベリーが収穫できたな。

 ワイルドストロベリーはどうやら1株から1~3個収穫できるらしく、今日だけでも10個採れたが、自分用にキープすることも考え、まだ納品には行かずに増やすことにした。

 ホレン草は完全に期待外れだったが、今日採れた青ニンジン、橙カボチャはどうだろう。現在の使い道としては、携帯食に混ぜる。もしくは野菜三種類を使ってサラダを作るかだ。

 あとはギルドに納品も出来るな。いや、待てよ……。俺がこれまでに畑で収穫した作物は薬草、陽命草、毒草、麻痺草、出血草、食用草、傷薬草、ホレン草、青ニンジン、橙カボチャの10種類だよな?

 確か農業ギルドの特殊クエストで、10種類の作物を収穫するっていうクエストがあったはずだ。これで達成条件をクリアしたってことだよな?

 あと、★5の作物を納品するっていうクエストもすっかり忘れてた。

「今日は農業ギルドに行くか」

 俺はアリッサさんの店に調合物を売りに行くついでに、農業ギルドに向かう事にした。さらに今日は露店も回ってみようかな。

 実はそろそろ錬金のレベルを上げようと思うのだ。錬金スキルで初期に行えるのは合成という作業である。言ってしまえば、AというアイテムとBというアイテムを混ぜて、1つのアイテムにするという事なのだがこれが中々難しい。

 まず、特定の組み合わせ以外は全て失敗となり、元となるアイテムは失われてしまう。同じアイテム同士の合成では品質を向上させることができるが、品質をより高くしようとすれば、凄まじい数のアイテムが必要となってしまうのだ。

 掲示板では、錬金レベルを上げるには毒草や麻痺草を大量購入して、それをひたすら合成しろと書かれていた。望むところである。

「じゃあ、これが報酬だ」

「ありがとうございます」

 農業ギルドで★5納品の特殊クエストは問題なくクリアすることができた。レベルは上がらなかったけどね。さらに、青ニンジン、橙カボチャの納品クエストを達成して、貢献度を稼いでおいた。こうやって少しずつ貢献度を上げておかないとね。ギルドランクが上がれば、また色々な種や苗が買えるようになるだろうし。日頃の積み重ねが重要なのだ。

 それと、雑草についても質問してみたのだが、作物扱いにはならないと言われた。どうやら図鑑でも作物ではなく、その他という分類に分けられているらしい。

「じゃあ、次は素材を買いに行ってみるか」

 北区にあったショタエルフのソーヤくんの錬金術店に向かってみよう。あそこでレシピを仕入れて、必要な素材を町で探すのだ。

「どもー」

「あれ、この間のお兄さん」

「え? 覚えてるの?」

 だって、一回だけ冷やかしに来ただけだぞ。もしかして全員を覚えてるくらいしか客が来ていないんだろうか。確かに流行ってはなさそうだけど。

「え? まあ、何となく? ほら、髪の色とか特徴的だし」

「あ、そう」

 完全に称号のことばれてるな。噂は消えるどころか広がってしまっているらしい。まあ、顔を覚えてもらってたんだし、前向きに捉えておこう。

「レシピを見せてくれる?」

「あ、はい! こちらです」

「あれ、凄く増えてない? 前は2つしかなかったと思うけど」

「はい少し増やしたんです。ポーション、傷薬、携帯食、狩猟薬、毒薬、麻痺薬、出血薬、睡眠薬ですね」

「睡眠草を手に入れたの?」

「もしかしてお兄さん、調合師か錬金術師ですか?」

「いや、調合と錬金を取ってるだけだ。睡眠系のものは初めて見たからさ」

「それはボーナスで選択したランダムアイテムボックスで偶然手に入れたんです。もう持ってませんね」

 残念だ。持ってたら譲ってもらおうと思ったのに。

「それにしても初期レシピをわざわざレシピスクロールにする必要あるのか? 全然売れなさそうだけど」

「売れないですね。それは錬金と執筆スキルのレベルアップのために作っただけですから、売れたら御の字って感じで」

「執筆スキル?」

 初めて聞いた。全部のスキルを網羅してるわけじゃないけど、そんなスキルまであるんだな。でも、何ができるんだ? 話の流れだとレシピスクロールが作れるみたいだけど。俺がまだ覚えてない錬金のスキルで作っていると思ってた。

「執筆は色々な物を書くことができるスキルですよ。今だと錬金で作った紙を使って、スクロールを作るくらいしかできないですけど、僕はこの先に魔本や魔導書があると思っています。僕の夢はこの世界で魔導書を作ることですね」

「へぇ」

「昔見たアニメに憧れてまして」

 色々な人がいるもんだと感心するね。それに魔導書とか魔本とか、何ができるかは分からんけど浪漫が感じられる。俺は応援するよ。

「だから関係ありそうな、執筆、錬金、調合、魔法陣、皮革を取っているんです」

「執筆、錬金、調合、魔法陣は何となく分かるけど、皮革?」

「昔の本の表紙は革で出来ているじゃないですか」

「なるほど」

 ここまで徹底していると感心してしまうな。それに魔導書なんて面白そうだし。ぜひ頑張ってほしいね。

「何か手掛かりがあったら、ぜひ教えてください」

「分かったよ。何かわかったら教える」

「ありがとうございます」

 その後、俺は即死薬、痛撃薬のレシピを購入し、痛撃草という草を譲ってもらった。売り物じゃなかったのだが、わざわざ出してきてくれたのだ。有り難いね。

 即死薬の作成には毒系、麻痺系、出血系、痛撃系の4種類の素材が必要なようだが、ソーヤ君のおかげで全て揃った。武器に振りかければ一定時間確率で相手を即死させるという薬だ。これがあったら、俺でも戦えるかもしれん。いいレシピを手に入れたぜ。

 痛撃薬は、痛撃草×3で作れる薬だ。これはちょっと特殊な状態異常で、次にくらうダメージを上昇させるという物だった。痛撃状態は出血状態と似ているが、こちらは1回ダメージを受けると治る代わりに、ダメージが大きい。

 それ以外に草系のアイテムは置いてないな。まあ、生産系プレイヤーなら自分で加工しちゃうだろうしな。

「あとは――そうだ、孵卵器はないよね?」

「孵卵器ですか? すいません、ちょっとないですね」

「そっかー」

「でも、作れるようになったら教えますから!」

「うん。お願いね。レシピがあったら買うし」

「じゃあ、フレンドコードを交換しませんか? 情報交換のためにも。生産関係のフレンドがまだ少なくて……」

「俺、生産メインて訳じゃないよ?」

 まあ、今は調合のスキルが一番育ってしまっているがね。

「それでも、レシピを買うぐらい熱心じゃないですか。その、ダメですか?」

 こやつ、出来る! まるで子犬のような目で見上げてくるソーヤ君に戦慄しつつ、俺は頷いていた。

「いいよ。こちらからお願いしたいくらいだし」

 俺も生産職のフレンドはぜひ欲しいのだ。こうして、ソーヤ君とフレンドコードを交換した。俺も魔導書に関して何かわかったら教えてあげるとしよう。

「じゃあ、行くね」

「はい、また来てくださいね」

 次はアリッサさんのところだな。

「アリッサさん、こんちわ」

「あら、いらっしゃい」

 まずは今朝作ったばかりの薬品類を売り払い、その儲けで水軽石を購入した。思ったよりも安くて驚いたね。

 考えてみたら、西の森の河原で採取できるアイテムだもんな。俺にとっては死地でも、普通のプレイヤーにとっては気軽に行ける場所だ。あそこで採取できるならそんな貴重品でもないってことか。

「それにあの動画大好評でさ。もう問い合わせが大変!」

「それって嬉し気にいう事ですか?」

「情報屋冥利に尽きるじゃない? 現在調査中ってことにしてるから、すぐに鎮静化すると思うしね」

「なら良いですけど」

 その後オルト用にハチミツを、錬金のレベリング用に毒草30個、麻痺草30個を購入してアリッサさんの店を後にした。この後は生産祭りだぜ!